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海外テニス

大坂なおみは東京五輪で金メダルを獲れるのか?“新世代の旗手”が歩んだ激動の1年を振り返る

内田暁

2021.07.23

東京五輪の会場で調整を進める大坂。初戦の相手は世界52位のジェン・サイサイ(中国)だ。(C)Getty Images

東京五輪の会場で調整を進める大坂。初戦の相手は世界52位のジェン・サイサイ(中国)だ。(C)Getty Images

 信念に忠実であろうとしたときの彼女が、いかに強くなれるかを、多くの人たちは昨年の全米オープンで目撃した。

【動画】いよいよ自身初の五輪に臨む大坂、全米V2を飾った決勝戦ハイライトをチェック!

 黒人の人権を世に強く訴えるべく、警官らの横暴による犠牲者の名が縫い付けられたマスクを着け、彼女はコロナ禍で無人のセンターコートに現れた。

「名前入りのマスクは、7枚あるの。悲しいことに本当は7枚では足りないけれど、せめてその全てを見せたいと思っている」

 初戦の勝利後、彼女はそう打ち明けた。

 7枚……それはすなわち、決勝戦までの試合数。彼女は、用意したマスクの数を明かすことで、一試合でも多くコートに立ち、一人でも多くの犠牲者の名を世に示す重責を、自らに課した。

 はたして彼女は、公約通り7枚のマスクをすべてコート上で示し、最後はトロフィーをつかみとる。ファンからの祝福の拍手も、熱狂の歓声もない。あまりに奇異な栄光の景観の中、彼女はひとりコートに横たわり空を見つめた。

「今まで、このコートで勝った選手たちが目にした景色を、私も見てみたかったの」
 
 静寂のなかで彼女は、信念を貫く勇気を与えてくれた先達たちの足跡に、自らの思いを重ねているようだった。

「記者会見に出たり他選手の会見を見ると、アスリートのメンタルヘルスへの配慮が足りないと感じることが、しばしばあります」

 そのようなソーシャルメディアへの書き込みで、大坂が全仏オープンの記者会見を拒否すると公言したのは、大会開幕直前の今年5月のことだった。

 寝耳に水だった大会関係者たちは、スター選手の突然の宣言に慌てふためく。

「我々は、彼女と話をしようと思った。だが、本人にメールを送っても返事はなく、エージェントに聞いても状況が分からないという。ナオミの練習コートに足を運んだが、それでも話してはもらえなかった」

 後にそう明かす全仏オープン関係者たちは、大坂が初戦の会見を拒否した時点で、罰金を科すとの声明を出す。さらには他のグランドスラムと連名で、このまま会見を拒否し続けるようなら、出場資格はく奪の可能性もあることを示唆した。
 
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