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海外テニス

大坂なおみは東京五輪で金メダルを獲れるのか?“新世代の旗手”が歩んだ激動の1年を振り返る

内田暁

2021.07.23

「私の予想や希望とは、まったく異なる状況に向かってしまった」

 再びソーシャルメディアで打ち明けた彼女は、「事態を収拾する最善の策」として、1回戦後に大会を棄権。約3年に渡りうつ状態に苦しめられていたこと、そして「しばらくコートを離れる」と告げて、ウィンブルドンも欠場した。

 今回の東京五輪はその全仏オープン初戦以来、約2か月ぶりの公式戦となる。ただ、コートを離れていたその間も、彼女は沈黙を守っていた訳ではない。

 7月上旬には、米国の『TIMES』誌にコラムを寄稿。「It's O.K. Not to Be O.K.(=大丈夫でなくて、大丈夫)」と題された寄稿文で、彼女は「世の中にはいろいろな人が居て、全員を喜ばせるのは難しい」こと、そして「大丈夫でないと口にして大丈夫。必ず、助けてくれる誰かがいるから」と世にうったえた。

 米国のスポーツ専門誌『スポーツイラストレーテッド:水着特集号』でも、「3人の革新的な女性」の一人として表紙を飾る。

「彼女は23歳の優れたアスリートというだけでなく、その若さで人種や人権、そしてメンタルヘルスなどの問題提起を行なった」
 
 同誌の電子版は、大坂をカバーに採用した理由を、そのように説明した。

 さらにはネットフリックスで、この3年間の歩みを追ったドキュメンタリーが公開される。2018年の全米オープン優勝により、一変した人生。突如集めたスポットライトの、常軌を逸した眩しさ。そして、ハイチと日本にルーツを持つ、自身の「人種と国籍」観——。

 これまで、ユーモアの仮面で覆い隠してきた多面的な素顔の数々を、彼女はこのフィルムの中で晒している。

 会見拒否に始まった一連の騒動の着地点への関心、そして“新世代の旗手”としての大坂の存在感は、自国開催の東京五輪でクライマックスを迎えるかのように、日々高まりを見せている。

 信念に忠実であろうとしたときの彼女が、いかに強くなれるかを、多くの人たちは昨年の全米オープンで目撃した。

 今回の東京五輪でも、彼女はセンターコートに、自身の主義を打ち立てられるだろうか? 舞台はあの時のニューヨークと同じように無観客の、有明コロシアムだ。

文●内田暁
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