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国内テニス

【全日本テニス選手権】ベスト8進出の21歳、白石光が「年齢のせいにして逃げない」と覚悟を決めた新たな戦い<SMASH>

内田暁

2021.11.03

大学卒業後のプロ転向宣言をしたことで白石の視線の先には、いつもの違う全日本が見えてきた。写真提供:齋藤宣孝(関西テニス協会)

大学卒業後のプロ転向宣言をしたことで白石の視線の先には、いつもの違う全日本が見えてきた。写真提供:齋藤宣孝(関西テニス協会)

 第1セットを失った後の、第2セット。

 ポイント間にタオルを取りに行くたび、「っしゃ!」「何やってんだ!」と声を出し自分を鼓舞し続けた。

 どちらかといえば、打ち合いの中で活路を見いだすのを得意とするストローカーが、サーブ&ボレーやネットプレーで攻め立てる。

 第2セットを6-0で奪うと、ファイナルセットも常にスコアで先行し、相手の追い上げを振り切った。

 21歳の白石光が、18歳の磯村志の挑戦を退けて、全日本選手権で初のベスト8に進出した。

 「今日の相手は自分よりも年下なので、試合序盤はすごく緊張していた」

 試合後、クールダウンを終えて頭も整理した白石は、試合前から覚えていた居心地の悪さを、素直に吐露した。

 ジュニア時代から活躍し、高校時代にインターハイを制した白石は、「若手」としての時間を長く過ごした選手だろう。

 そんな彼も今大会では、若手から中堅に差し掛かる年代。「このレベルまで来たら年齢は関係ない」と知りながらも、年少者に負けたくないとの思いが「気持ちをネガティブにしていた」と言う。先日、「大学卒業後のプロ転向」をソーシャルメディア等で公言したことも、過剰な意識の背景にあったかもしれない。
 
 高校卒業後の進路に早稲田大学を選んだことを、周囲では「意外に思った」という声は多い。

 それは白石本人が、プロ行きを匂わせていたことにも起因する。

「高校2~3年生の頃は、プロになりたいと言うのが、かっこいいと思っていた」

 やや照れ臭そうに、当時の心模様を当人が打ち明ける。

「でも本当にプロで通用すると思えていたかと言ったら、そうではない。フューチャーズ(ツアー下部大会)やジョップ(国内賞金大会)でも負けていたので、自信がなかった」
 
 だからこそ決断は一旦保留し、大学進学の道を選ぶ。とはいえ、4年後にテニスをやめる自分は想像できなかった。プロか、あるいは実業団か…、それらが思い描いた、近い未来像だった。
 
 その選択の時が迫り始めた今年の春先は、精神的に揺れたという。だからこそ早めに決断を下し、公言することで覚悟を固めた。

 実際にプロになると決めた時から、気持ちもプレーも「楽になった」という。大学で心身を鍛えたことにより、「高校生の時には勝てなかった相手に勝てるようにもなった」。インカレを制したことで、あらゆる年代で国内タイトルを手にしたとの自負もある。

 単に「かっこいいから」と思っていた高校生の頃とは違う、自信と実績を携えてのプロ宣言だ。

 だからこそ今回の全日本にも、白石は「年齢のせいにして逃げない」との意思を抱いて挑んでいる。

「全日本は今回が5回目。初めて出させて頂いた時は場違いだと思ったが、今年の目標は、まずはベスト4。そこをしっかり目指しているのが、良いところかなと思います」

 退路を断ち、心を決め、自ら口にした目標地点へと、力強く歩みを進める。

■男子シングルス3回戦の結果(11月3日)
白石光(早稲田大学)[13] 3-6 6-1 6-3 磯村志(やすいそ庭球部)[Q] 
※所属の後の数字はシード、Q=予選勝ち上がり

取材・文●内田暁

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