第1セットを失った後の、第2セット。
ポイント間にタオルを取りに行くたび、「っしゃ!」「何やってんだ!」と声を出し自分を鼓舞し続けた。
どちらかといえば、打ち合いの中で活路を見いだすのを得意とするストローカーが、サーブ&ボレーやネットプレーで攻め立てる。
第2セットを6-0で奪うと、ファイナルセットも常にスコアで先行し、相手の追い上げを振り切った。
21歳の白石光が、18歳の磯村志の挑戦を退けて、全日本選手権で初のベスト8に進出した。
「今日の相手は自分よりも年下なので、試合序盤はすごく緊張していた」
試合後、クールダウンを終えて頭も整理した白石は、試合前から覚えていた居心地の悪さを、素直に吐露した。
ジュニア時代から活躍し、高校時代にインターハイを制した白石は、「若手」としての時間を長く過ごした選手だろう。
そんな彼も今大会では、若手から中堅に差し掛かる年代。「このレベルまで来たら年齢は関係ない」と知りながらも、年少者に負けたくないとの思いが「気持ちをネガティブにしていた」と言う。先日、「大学卒業後のプロ転向」をソーシャルメディア等で公言したことも、過剰な意識の背景にあったかもしれない。
高校卒業後の進路に早稲田大学を選んだことを、周囲では「意外に思った」という声は多い。
それは白石本人が、プロ行きを匂わせていたことにも起因する。
「高校2~3年生の頃は、プロになりたいと言うのが、かっこいいと思っていた」
やや照れ臭そうに、当時の心模様を当人が打ち明ける。
「でも本当にプロで通用すると思えていたかと言ったら、そうではない。フューチャーズ(ツアー下部大会)やジョップ(国内賞金大会)でも負けていたので、自信がなかった」
だからこそ決断は一旦保留し、大学進学の道を選ぶ。とはいえ、4年後にテニスをやめる自分は想像できなかった。プロか、あるいは実業団か…、それらが思い描いた、近い未来像だった。
その選択の時が迫り始めた今年の春先は、精神的に揺れたという。だからこそ早めに決断を下し、公言することで覚悟を固めた。
実際にプロになると決めた時から、気持ちもプレーも「楽になった」という。大学で心身を鍛えたことにより、「高校生の時には勝てなかった相手に勝てるようにもなった」。インカレを制したことで、あらゆる年代で国内タイトルを手にしたとの自負もある。
単に「かっこいいから」と思っていた高校生の頃とは違う、自信と実績を携えてのプロ宣言だ。
だからこそ今回の全日本にも、白石は「年齢のせいにして逃げない」との意思を抱いて挑んでいる。
「全日本は今回が5回目。初めて出させて頂いた時は場違いだと思ったが、今年の目標は、まずはベスト4。そこをしっかり目指しているのが、良いところかなと思います」
退路を断ち、心を決め、自ら口にした目標地点へと、力強く歩みを進める。
■男子シングルス3回戦の結果(11月3日)
白石光(早稲田大学)[13] 3-6 6-1 6-3 磯村志(やすいそ庭球部)[Q]
※所属の後の数字はシード、Q=予選勝ち上がり
取材・文●内田暁
【PHOTO】昨年の全日本選手権ファイナルを厳選写真で振り返り!
ポイント間にタオルを取りに行くたび、「っしゃ!」「何やってんだ!」と声を出し自分を鼓舞し続けた。
どちらかといえば、打ち合いの中で活路を見いだすのを得意とするストローカーが、サーブ&ボレーやネットプレーで攻め立てる。
第2セットを6-0で奪うと、ファイナルセットも常にスコアで先行し、相手の追い上げを振り切った。
21歳の白石光が、18歳の磯村志の挑戦を退けて、全日本選手権で初のベスト8に進出した。
「今日の相手は自分よりも年下なので、試合序盤はすごく緊張していた」
試合後、クールダウンを終えて頭も整理した白石は、試合前から覚えていた居心地の悪さを、素直に吐露した。
ジュニア時代から活躍し、高校時代にインターハイを制した白石は、「若手」としての時間を長く過ごした選手だろう。
そんな彼も今大会では、若手から中堅に差し掛かる年代。「このレベルまで来たら年齢は関係ない」と知りながらも、年少者に負けたくないとの思いが「気持ちをネガティブにしていた」と言う。先日、「大学卒業後のプロ転向」をソーシャルメディア等で公言したことも、過剰な意識の背景にあったかもしれない。
高校卒業後の進路に早稲田大学を選んだことを、周囲では「意外に思った」という声は多い。
それは白石本人が、プロ行きを匂わせていたことにも起因する。
「高校2~3年生の頃は、プロになりたいと言うのが、かっこいいと思っていた」
やや照れ臭そうに、当時の心模様を当人が打ち明ける。
「でも本当にプロで通用すると思えていたかと言ったら、そうではない。フューチャーズ(ツアー下部大会)やジョップ(国内賞金大会)でも負けていたので、自信がなかった」
だからこそ決断は一旦保留し、大学進学の道を選ぶ。とはいえ、4年後にテニスをやめる自分は想像できなかった。プロか、あるいは実業団か…、それらが思い描いた、近い未来像だった。
その選択の時が迫り始めた今年の春先は、精神的に揺れたという。だからこそ早めに決断を下し、公言することで覚悟を固めた。
実際にプロになると決めた時から、気持ちもプレーも「楽になった」という。大学で心身を鍛えたことにより、「高校生の時には勝てなかった相手に勝てるようにもなった」。インカレを制したことで、あらゆる年代で国内タイトルを手にしたとの自負もある。
単に「かっこいいから」と思っていた高校生の頃とは違う、自信と実績を携えてのプロ宣言だ。
だからこそ今回の全日本にも、白石は「年齢のせいにして逃げない」との意思を抱いて挑んでいる。
「全日本は今回が5回目。初めて出させて頂いた時は場違いだと思ったが、今年の目標は、まずはベスト4。そこをしっかり目指しているのが、良いところかなと思います」
退路を断ち、心を決め、自ら口にした目標地点へと、力強く歩みを進める。
■男子シングルス3回戦の結果(11月3日)
白石光(早稲田大学)[13] 3-6 6-1 6-3 磯村志(やすいそ庭球部)[Q]
※所属の後の数字はシード、Q=予選勝ち上がり
取材・文●内田暁
【PHOTO】昨年の全日本選手権ファイナルを厳選写真で振り返り!