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ワクチン接種に対するジョコビッチの姿勢を犬猿の仲のキリオスが全面支持!「強要するのは道徳的に間違い」<SMASH>

中村光佑

2021.11.19

ワクチン接種義務化の動きに対して地元オーストラリアのキリオス(左)が「選択の自由を与えるべき」とジョコビッチ(右)の考えを支持した。(C)Getty Images

 大会に出場する全選手への新型コロナウイルスワクチン接種義務化をめぐり、テニス界に大きな混乱を招いている来年1月開催の全豪オープン。そんな中、ワクチン接種を強制する方針に対し、男子テニス世界90位のニック・キリオス(オーストラリア)が持論を展開した。

 現段階で2022年大会の主催サイドは「2度ワクチンを受けた者は問題なくオーストラリアに入国できる」とのコメントを発表しており、事前にワクチンを接種した選手に隔離生活を課されることはないと予想されている。

 一方で接種を終えていない選手については会場のメルボルンがあるビクトリア州のダニエル・アンドリュース首相が「ワクチンを打っていない選手に例外を認めることはない」と発言。そのため、間もなく全豪出場におけるワクチン接種義務化の正式決定が下される可能性が高まっている。

 だが、安全性の観点からテニス界では依然としてワクチン接種に消極的な選手も多く、全豪9度の優勝を誇る世界王者のノバク・ジョコビッチ(セルビア)もその中の1人だ。また、普段から身体の管理を徹底しているジョコビッチは接種義務化に強く反対の意向を示しており、以前には「(ワクチンが義務化されるなら)メルボルンでプレーするかはわからない」とまで述べていた。

 キリオスといえばジョコビッチを度々揶揄してきたことで知られ、テニスファンの間でも「犬猿の仲」と称されている。ところが、今回キリオスは「ワクチンを打っていないプレーヤーがメルボルンを自由に動き回ることを受け入れなければならないのは、道徳的に正しいことだとは思わない」とした一方で、確執のあるジョコビッチの考えを尊重する姿勢を見せているのだ。
 
「自分はすでに2回のワクチン接種を終えているけど、誰かにワクチンを打つことを強制する、ましてやアスリートに対して『ワクチンを打っていないから、大会に出ることはできない』などと言ったりするのは常識的に正しいとは思えない。(NBAの)カイリー・アービングやノバク(ジョコビッチ)は、たくさんのことを犠牲にして成功を収めており、彼らは何百万人もの人たちが敬意を払っている世界的な選手だ。彼らは大会に出場する権利があるし、ワクチン接種を強要するなんて道徳的に間違っていると思う」

 キリオスのこの発言を受け、現在ATPファイナルズ(今季最終戦)に出場しているジョコビッチはグループリーグ第2戦後の記者会見で「ここ数年、彼(キリオス)が僕に対して何を言ってきたかを知っていたから、そういう発言は予想外だった」と驚きを隠せない様子。それでも最後にジョコビッチは「キリオスと同じ考えだ」とした上で、改めてワクチン接種義務化に異論を唱えた。

「選択の自由は誰にとっても不可欠なもの。予防接種に限らず、人生のあらゆる場面で、選択の自由は必要だと思う。今回のケースでは、自分の身体に何を入れるかということを考える必要がある。僕は常に選択の自由を支持してきたし、これからも支持していくつもりだ」

 全豪の開幕まで残り約2か月。ワクチン接種については一人ひとりの意見が異なるため頭の痛い話題ではあるが、とにかく出場権を持つ全選手が無事にプレーできることを祈りたい。

文●中村光佑

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