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日本人プロテニス選手が匿名で明かした厳しくリアルな窮状!「いつまで選手活動を続ければよいのか」<SMASH>

スマッシュ編集部

2021.11.26

錦織圭(写真)のような境遇にある選手はごく一部。その他多くの日本人プロテニス選手は現在先行きの見えにくい状況にある。(C)Getty Images

 2019年に、ITF(国際テニス連盟)は大規模なプロテニス下部ツアーの制度変更を立て続けに実施した。その主な目的は「生計を維持できないプロ選手の削減」だったのだが、コロナ禍も相まって、現在も多くのプロテニス選手が先行きの見えない中での選手活動を強いられている。

 こうした下部ツアーの制度変更は、日本人プロ選手たちにどのような影響を与えたのか。ランキングも年齢も異なる日本人男子プロ選手ら4名に匿名でインタビューを行ない、その実態を調査した結果の一部を紹介する。

 まず、「チャレンジャーレベルに上がれない不安と焦りがある」と話すのは、20代半ばで世界ランキング1000位~2000位のB選手だ。以前よりもATPチャレンジャー大会(下部ツアー)への出場やスポンサーの獲得が困難になっているといい、「いつまで選手活動を続ければよいのだろうか」と不安を口にした。

 それに対して、「ちょっとラッキーだった」と答えるのは10代のD選手。若手ということもあり、ジュニア本戦枠など今回の制度変更による恩恵を受けた数少ない選手の一人だ。

 これに関連して、世界ランキング200位~300位のA選手は「資金の状況や学業の関係でITFジュニア大会を回れないジュニア選手や、大学に行ってからプロになりたいと考えている選手、ベテランでチャンスを信じているような選手にとってはかなり不利なルール、平等ではない」と指摘する。

 実際に、そうした資金面の影響を受けた選手は少なくない。20代半ばで世界ランキング700位~1000位のC選手は、「ITF国際大会よりもJTA(日本テニス協会)国内大会のほうが賞金をより多く稼げるため、そちらへの出場が増えた」と話す。国内大会に関しては、コロナ禍で国際大会の中止が相次ぐ中、これまでにないほど重要度が増しているという。
 
 こうした状況を踏まえてA選手は、「協会や大会主催者に任せきりにせず、選手が主導して国内大会充実化を進めていくべきだ」と強調する。近年は全日本男子プロテニス選手会やプロテニスリーグ機構(PTL)が設立されるなど、新たな試みも多く行なわれている。それだけに、むしろこうした状況を好機と捉えて、国内におけるプロテニスの価値をさらに高めていくことへの期待も大きい。

 そのほか、「海外の大会と比較して日本の大会は駐車場がない、練習コートが少ない、練習ボールが準備されていないなど不便を感じる」(B選手)、「まず、大会スタッフが英語を話せないといけない、大学シリーズは改善が必要」(A選手)、「3月の6週連続で、かつ1週ごとの移動はやめてほしい」(B選手)、「国内のATPチャレンジャー大会数を倍に増やしてほしい」(D選手)といった要望も寄せられた。

 なお、今回の調査は慶應義塾大学の発田志音氏、東京理科大学の村上貴聡教授、専修大学の平田大輔教授、亜細亜大学の堀内昌一教授、広島文化学園大学の武田守弘教授らの共同研究チームによって行なわれたもの。日本テニス学会研究プロジェクトの助成を受けて実施され、今年9月に同学会で発表された。

構成●スマッシュ編集部

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