国内テニス

トップ選手が身近な存在だった望月慎太郎が順調にプロの世界へ。少しでも多い情報が可能性を広げる【山中夏雄コーチ】<SMASH>

山中夏雄

2022.01.19

シャポバロフと望月慎太郎(左写真)。望月とニック・ボロテリー(右写真)。選手が身近な存在で、プロを育てた経験豊富なコーチもいる環境だった。写真提供:山中夏雄

 錦織圭のアメリカ留学をサポートした盛田正明テニスファンド(MMTF)のコーチとして、アメリカのIMGアカデミーに常駐し、日本のジュニアたちの成長を支えている山中夏雄氏。このコラムでは日本のトッププロたちが、いかにして成長してきたのか、日米テニス界の違いなどを教えてもらう。今回は昨年プロに転向した望月慎太郎が、なぜスムーズにプロへの道を歩めたのか。

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 プロが身近にいる環境はIMGアカデミーでトレーニングする大きなメリットの一つです。IMGアカデミーには、錦織圭はもちろん、西岡良仁やシャラポワ、シャポバロフなども練習に来ていました。彼らをリスペクトしつつ、身近な存在なので自然と自分の将来像を感じていたと思います。

 日本とは、この環境が大きな違いです。日本でテニス選手として絶対的な存在は、男子だと松岡修造さん、女子では伊達公子さんでしょう。しかし、このお二人と頻繁に会うのは難しい。たまに会うと緊張しますし、せっかくの機会なので彼らから一生懸命吸収しなくてはと思いすぎてしまいます。

 IMGアカデミーではトッププロが日常的に同じ場所にいるため、馴染みやすく同じ目線で考えられます。例えば、錦織がどういう練習をしていて、遠征にはどれぐらい行っているかなどを感じることができ、自然と自分の行動に生かすことができます。
 
 彼らのジュニア期のことについても、当時のコーチがアカデミー内にいるわけですから、情報を得ることができます。加えて、成功した選手だけでなく、うまくいかなかった例も知ることができるので、自分が目指す地点に向けて進む道を、明確にイメージしやすい環境にあるのです。

 日本国内でも世界への道筋を知っている人から学べる機会は増えています。元選手だけではなく、世界を知っている指導者の話を聞ける機会を作ることは、プロを目指すジュニアや指導者にとっては貴重な情報になるはずです。

 プロという存在が身近であり、目指す方向性が見えていると、順調に成長できる可能性は高くなります。

文●山中夏雄(盛田正明テニスファンド・IMGアカデミー常駐コーチ)

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