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大坂なおみが見出した新スタイル! 全豪オープン2回戦快勝劇の裏に見た「楽しみながら」戦う姿<SMASH>

内田暁

2022.01.20

メンタル的な問題で約4か月にわたり戦線を離脱していた大坂だが、現在はコート上で楽しむことを見出したようだ。(C)Getty Images

「ドローのことは言わないで! 私はいつも、次の対戦相手しか見ないようにしているから」

 大会前の会見で、大坂なおみは、ドローについて聞こうとする記者の質問を遮った。

 大坂に限らず、ドローの全体像を見ない選手は多い。自分の試合以外は制御しようがないというのが主な理由だ。ましてや誰が勝ち上がってくるかなどは、勝負の世界ではわからない。

 2回戦での大坂の対戦相手は、戦前の大方の予想では、ダヤナ・ヤストレムスカだった。ドーピング疑惑のため、約半年ツアーを離れランキングは落とした21歳だが、2年前には21位に達した実績を、多くの関係者は知っていた。

 だが、実際に勝ち上がってきたのは、31歳のマディソン・ブレングルだった。

 長くトップ100に定着するブレングルは、玄人好みのプレーヤーだろう。派手な強打などはなく、サーブは最速で140キロ台。それでも多くの番狂わせを演じてきた彼女の強さは、分析力と高い戦略性にあるだろう。初戦の、6-1、0-6、5-0(最後は相手のリタイア)という奇妙なスコアラインも、彼女の特性を色濃く映しだしている。
 
 そのクセ者相手に大坂は、立ち上がりから、完璧とも言えるプレーを見せた。ストロークは走り、ネットプレーを決める余裕も。1ゲームも落とすことなく、僅か20分で第1セットを奪い去った。
 
 だが第2セットに入ると、ブレングルが強さを発揮し始める。バックのストロークはスピードを増し、配球や球種もバリエーションが増える。やや落ち着きを失った大坂が、先にブレークを許した。

 だが直後のゲームをブレークすると、流れは再び反転する。ブレングルの戦略性や分析力を、大坂のショットの質が上回り始めていた。最後は8連続ポイント奪取で、終わってみれば大坂が6-0、6-4の快勝だ。

 難敵相手に得た勝利の先で、大坂が対戦するのは、20歳のアマンダ・アニシモワ。戦前の予想では、東京オリンピック金メダリストのベリンダ・ベンチッチが来ると思われていたが、やはりここでも小さな番狂わせは起きていた。

 アニシモワとの対戦歴はないが、フロリダのIMGアカデミーを拠点とする俊才のことは、以前より知っていたという。何より大坂のトレーナーの中村豊は、以前にアニシモワを指導していた。情報収集と準備は万全だろう。

 その中村たちと大坂は、試合のない日にはよく、不規則なバウンドをするゴムボールを用いて、ピンポンのような対戦ゲームをするという。

「楽しみながら、同時に敏捷性を上げる効果もあるんです」とは、中村氏の弁。
 
 先を見すぎることなく、楽しみながら、なおかつ、ぬかりなく——。
 
 ディフェンディング・チャンピオンが、一つずつ階段を上っていく。

現地取材・文●内田暁

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