海外テニス

「撃つ必要があれば撃つ」ウクライナ軍予備役入りした男子テニス元31位のスタコフスキが悲壮な決意を吐露<SMASH>

中村光佑

2022.03.03

ウクライナの惨状をありのままに語ったスタコフスキは、母国を守るために銃を撃つことも辞さないという姿勢を示した。(C)Getty Images

 男子テニス元世界ランク31位で、今回のロシアのウクライナ侵攻を受けて軍の予備役に登録したセルゲイ・スタコフスキ氏(ウクライナ)が、オーストラリアのラジオ局『RSN』のインタビューに出演。改めて自国の危機に立ち向かう強い意志を示した。

 2013年のウインブルドン2回戦で元世界王者のロジャー・フェデラー(スイス/現27位)に勝利し、大番狂わせを演じた36歳のスタコフスキ氏。今年1月の全豪オープン予選を最後に現役生活を終えたウクライナ・テニス界のスーパースターは、現地時間2月26日に応じた英衛星放送『Sky News』のインタビューで「(ウクライナの)予備軍に登録した」と報告。出生地の首都キエフにも侵攻の被害が及んでいることを受け、自ら武器を手にして戦うと表明していた。

 今回のインタビューでスタコフスキ氏は「自分の国がこうなっているのを目の当たりにするのはつらい。出国するために長い行列に並び、何時間も、そして何日も国境で待っている子どもや女性をたくさん見てきた」と苦しい胸の内を吐露。そのうえで「家族を捨て、自分の理念と母国への愛に導かれ、キエフの地位を守るための難しい決断をした」と明かした。
 
「彼ら(ロシア)は空から攻撃していて、飛行機で爆撃している。我々は何もできず、自らを守るための資源がない。キエフは苦境にある。わずか2分間で67棟の建物を倒した。何が起きているのか、不思議な思いだ」

「それでも今、キエフにいると人々の目にエネルギーが満ち溢れていて安心できる。私はスロバキアから徒歩で国境を越えたが、そんな中で我々のテリトリーがいかによくまとまっているかということがわかった。みんなが手伝いたい、見回りや見張りをしたい、そして最後には勝ちたいと思っている」

 そう母国の状況を説明したスタコフスキ氏は「私は兵士ではないし、銃を持ったこともないし、人を撃ったこともない。でも、必要があればそうするよ。恐怖? もちろん恐怖はある。この状況で恐怖を感じないのはバカだけだ」と発言。テニスファンからも心配の声が上がる中、やはり闘う姿勢に変わりはないようだ。

 すでに多くの人命が奪われているロシアのウクライナ侵攻。依然として全く予断を許さない状況が続いているが、とにかく一刻も早い事態の収束とスタコフスキ氏の無事を祈るばかりだ。

文●中村光佑

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