海外テニス

元世界1位のアザレンカが16歳新鋭との対戦中に説明なく途中棄権し、後に謝罪。「今日は戦うのは間違っていた」<SMASH>

中村光佑

2022.03.28

インディアンウェルズの3回戦では試合中に涙を流したアザレンカ。精神的に難しい状態にあるようだ。(C)Getty Images

 現在開催中の女子テニスツアー「マイアミ・オープン」(3月22日~4月3日/アメリカ:マイアミ/ハードコート/WTA1000)のシングルス3回戦で元世界ランク1位のビクトリア・アザレンカ(現世界16位)がなんの説明もなく試合を途中棄権したことについて、謝罪した。

 今大会に第12シードで出場した32歳のアザレンカは現地3月27日に行なわれた3回戦で、ワイルドカード(主催者推薦)での本戦出場を果たした16歳のリンダ・フルフリトワ(チェコ/279位)と対戦。2回戦で世界24位のエリーゼ・メルテンス(ベルギー)をフルセットで破るという番狂わせを演じた女子テニス界の新鋭に序盤から苦戦を強いられ、3度のブレークを喫して2-6でセットダウン。第2セットでもアザレンカは全く流れをつかめず、0-3とリードを広げられてしまう。

 問題のシーンは第4ゲームの開始直前のことだった。劣勢に立たされたアザレンカは理由を説明することなく突如主審に途中棄権を宣告。ベンチに置いていたバッグを手に取り、主審と対戦相手に握手を交わして足早にコートから立ち去ってしまったのだ。この時の様子はスペインのテニス専門メディア『Punto de Break』に公開され、SNS上でも「こんな棄権の仕方はばかげてる」「これ何なの? 彼女はもう33歳でしょ?」などと大炎上する事態に発展した。

 多くのファンから痛烈な批判を浴びたアザレンカだが、試合後に元世界女王は「今日はコートに立つべき日ではなかった」とコメントを発表。フルセットの大接戦の末に勝利を収めた現地25日の2回戦を引き合いに、途中棄権に至った経緯について説明した。
 
「ここ数週間は、私生活でも非常にストレスの多い日々だった。前回の試合は私から多くのことを奪ったけど、初戦を乗り越えることを後押ししてくれた素晴らしい観客の前で今日もプレーしたかった。コートに出てやってみようと思ったけど、今日は戦うのは間違っていたわ」

「私はいつも大会でチャレンジすることや重圧を味わうことを楽しみにしているけど、今日はもう(心境的に)すごくきつかった。今はちょっと休んでまた戻ってこれたらと思っている」

 最後には16強進出を果たしたフルフリトワへ「彼女におめでとうと言いたい。そしてこのトーナメントと彼女のプロとしてのキャリアの始まりが幸運に満ちあふれたものであってほしい」と祝福と期待の言葉を送り、ファンに対しても「今日起こったことについては申し訳なく思っている」と謝罪した。

このほど発生したロシアのウクライナ侵攻により、現在は様々な競技でロシアと同国の軍事攻撃を支援するベラルーシに制裁を課す動きが加速している。ベラルーシ国籍のアザレンカは以前のインタビューで「胸が張り裂けそうだ」と自国をめぐる世界情勢に複雑な思いを抱いていることを明かしており、前週のBNPパリバ・オープン3回戦でも試合中に突然涙を流すシーンも見られたほどだった。とにかく今は彼女が一刻も早く回復することを祈るばかりだ。

文●中村光佑

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