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悪童キリオスが最悪だった過去メンタルを告白!「人生が嫌になり、自分を切ったり、燃やそうとした」<SMASH>

中村光佑

2022.05.06

トリッキーなプレーなどでも人気を博したキリオスだが、その内側には苦悩するもう一人の自分がいたようだ。(C)Getty Images

 破天荒な性格と歯に衣着せぬ言動からテニス界では"悪童"とも称されている男子テニス元世界13位のニック・キリオス(オーストラリア/現75位)が、母国オーストラリアのスポーツメディア『Nine』のインタビューに応じ、メンタルヘルスに不調をきたしていた過去を振り返った。

 ノバク・ジョコビッチ(セルビア)やラファエル・ナダル(スペイン)、ロジャー・フェデラー(スイス)ら「ビッグ3」の全員から勝利をもぎ取った経験を持ち、抜群のセンスで人々を魅了してきたキリオス。だが、そんな彼は2019年シーズンにファンからの期待やフィジカル面での不安から、精神的に不安定な状態に陥ったことがあったという。

 今年2月24日には自身のSNSで19年1月に出場した全豪オープンでの写真とともに長文のメッセージを投稿し、「自傷行為に及んだこともあった」と明かしていたキリオス。今回のインタビューで「新型コロナの感染拡大が始まる前からとても深刻で心配な時期を過ごしていた」と告白していた彼は、つらい気持ちを抱え続けていた当時のことを次のように語った。

「自傷行為までしてしまった。自分のことを心配してくれる人はたくさんいたのに、俺はみんなから孤立し、自分の心も閉ざしてしまった。自分で問題を処理し、対処しようとした。アルコールや薬物もずいぶん乱用したね」
 
「"ニック・キリオス"が一体誰なのか人々はまったく気にせず、彼らはただテニスプレーヤーとして、さらにはクレイジーなテニスプレーヤーとして見ていた。俺は利用されていた」

「いつもみんなをがっかりさせているような気がしていたんだ。自分が役立たずの人間であるような気がしていた。自分の人生さえも嫌になる時があった。自分を切ったり、時には燃やそうとしたり……めちゃくちゃなことをやっていた。今でも怖いくらいに暗い時期があった」

 それでもそのような大変な苦労を経て、「今は元気だよ。ほとんどお酒も飲まない」というキリオス。

 新型コロナの感染拡大が発生して以降は多くの大会を欠場したことで大きくランキングを落としてしまったものの、「トラブルがあった家族との関係を取り戻すためにも、まずは食事や睡眠、トレーニングを少し増やすなどして健康的な習慣を身に付けた。そういう意味ではパンデミックの時期も少しは役に立っていると思う」と前向きにとらえているようだ。

 なお、今年4月初旬に行なわれた「アメリカクレーコート選手権」(アメリカ:ヒューストン/クレーコート/ATP250)で約3年ぶりにクレー大会に出場したキリオスだったが、現在は故郷オーストラリアに戻っている。現時点では今後どの大会に参戦するのかは明らかにしていない。

文●中村光佑

【PHOTO】プレーの合間に垣間見えるキリオスらトッププロの素顔