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海外テニス

【伊達公子】欲がない時に好成績が出る⁉故障明けには幸運が舞い込む時もある<SMASH>

伊達公子

2022.06.10

「ラストミニッツ」で本戦入りしたソウル大会で優勝した経験がある伊達公子さん。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

「ラストミニッツ」で本戦入りしたソウル大会で優勝した経験がある伊達公子さん。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

 世界中で行なわれているテニスの大会には、選手が自分で大会を選んでエントリーしていきます。本戦と予選のエントリーがあり、当然本戦に入れた方がいいので、どちらになるかわからない微妙なランキングの時は、パソコンの前でぎりぎりまで状況を見つめている時もありました。

 ドロー作成の直前のタイミングで入れることを「ラストミニッツ」と言います。誰かがウィズドローして、最後の1分で入れたラッキーな選手です。私もこの経験があります。中国の大会でダブルスで勝ち進んだため、翌週の韓国の大会には本戦と予選にエントリーしていましたが、予選のエントリーをキャンセルしました。

 翌週の本戦にはもう入れないだろうと半分諦めでダブルスに集中していたためエントリーしていたことすら忘れていたのですが、ダブルス決勝後に、突然韓国の大会にラストミニッツでシングルスの本戦に入れたと連絡がきたんです。急いで飛行機を手配して、韓国に行って大会に出場。そして、セカンドキャリアでツアー優勝することができました。あれは幸運から始まった優勝だったんです。

 欲がない状態だったんだと思います。前週にダブルスで決勝に行っているので調子は良く、時間がなかったのでコートに慣れなくてはとか、万全に整えようとか、色々なことを考える余裕がありませんでした。
 
 思い込み過ぎない時に、良い結果が出ることは意外にあるものです。1993年に全米オープンで初めてベスト8入りした時もそうでした。ウインブルドン直前に故障してツアーから離れ、全米オープン前にどうにか動ける状態になっていました。練習不足だし、出場か欠場か悩みましたが、とりあえず練習がてら出場しようと思ったら、好成績が出たんです。

 錦織圭選手が全米オープンで決勝まで行った時も、大会前に故障していたので同じような状況ですね。欲がない時というのは、意外とチャンスが舞い込んでくる時でもあるのです。

 ただし、いつもではありません。そこが難しく、意図的にそういう気持ちを作り上げようとしてもダメなんです。「無欲の勝利」ということでしょうか。故障からの復活は大変な道のりですが、できる限りの努力をしておけば幸運がやってきてくれるかもしれません。

文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン

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