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海外テニス

「もう黙ってろ!」ウクライナ軍で戦う名手スタコフスキが、ロシアの大会に出た元選手と激論!「モラルより金か」<SMASH>

中村光佑

2022.12.04

母国ウクライナを守るために軍の予備役に就いている元31位のスタコフスキ(左)は、トロイツキ(中)、ティプサレビッチ(右)と戦争やスポーツの在り方について意見が衝突、激しくやり合った。(C)Getty Images

母国ウクライナを守るために軍の予備役に就いている元31位のスタコフスキ(左)は、トロイツキ(中)、ティプサレビッチ(右)と戦争やスポーツの在り方について意見が衝突、激しくやり合った。(C)Getty Images

 今年2月末に始まったロシアのウクライナ侵攻は、いまだスポーツ界に大きな影響を与えており、無論テニス界も例外ではない。そのなかで今年1月にプロテニス選手を引退した男子元世界31位のセルゲイ・スタコフスキ氏(36歳)は、現在母国ウクライナを守るために国の予備軍の一員として戦場に赴いている。

 日々戦地の様子をSNSで発信し続けてきたスタコフスキ氏は、テニス界が侵攻国出身の選手に対して国際大会からの締め出しを積極的に行なわないことに度々批判の声を上げてきた。オフシーズンに入った現在は各地でエキシビションマッチが開かれているが、同氏は12月1日からロシア・サンクトペテルブルクにて開催中の「ノース・パルミラ・トロフィーズ2022」(ハードコート)に参加している2人の人物を非難した。

 このサンクトペテルブルクのエキジビションにはアスラン・カラチェフ(男子59位)やユリア・プチンツェワ(カザフスタン/女子51位)といった男女の現役選手に加え、スタコフスキ氏と同じくすでに現役を引退した名プレーヤーも参加している。今回スタコフスキ氏の非難の的となったのは、セルビア出身のビクトル・トロイツキ氏(男子元世界12位/昨年引退)とヤンコ・ティプサレビッチ氏(男子元同8位/2019年に引退)の2人だ。

スタコフスキ氏はエキジビションが開幕した現地12月1日に自身の公式ツイッターを更新。トロイツキ氏とティプサレビッチ氏の2人と交わしたWhatsApp(オンラインメッセージツール)での会話を公開した。
 
 初めにスタコフスキ氏はトロイツキ氏を「ガッカリしたよ、ビクトル。ロシアでの君の姿を目にするとはね。でもおそらく私はお金が全てなのだろうと思う」と皮肉を込めて糾弾。

 これに対してトロイツキ氏は「祖父母の国にいられるのは貴重なことなんだ! あなたは政治とスポーツを混同したインスタグラムのピエロだ。これは戦争とは関係ないが、あなたがそんなことを言うなら、僕と僕の国(セルビア)だってあらゆるクソなことを経験し、これまで支援を受けたことは決してない! だからもう黙っていろ」と激しく反論した。

 さらにスタコフスキ氏は「ロシアの金づるになるより、自分の国を守るインスタグラムのピエロになる方がいい」と返答。暴言とも取れる言葉を記したトロイツキ氏を冷たくあしらった。

 続けてスタコフスキ氏は同様にティプサレビッチ氏を「失望したよ、ヤンコ。ロシアでの君の姿を目にするとはね。モラルよりもお金が大事なのだろう。それが君の選択というわけだね」と批判。

 ティプサレビッチ氏が「嘘だろ?“インスタグラムの反逆者”さん、これについてはどうだろう。20年前にNATO(北大西洋条約機構)軍が僕の国、僕の家族、僕たちの国の人々を爆撃した時、君や君のクソ家族はボイコットしたり、何らかの形で抗議したのか?」と応戦すると、スタコフスキ氏は「金儲けを楽しんでね。インスタグラムの反逆者か。そう言ってくれてありがとう」と冷淡に返信した。

 一向にロシア人選手や同国の大会に厳しい措置を講じようとしないテニス界の現状に、常に命の危険と隣り合わせのスタコフスキ氏が憤りを覚えたのも無理はないだろう。誰もが心穏やかに過ごせる日々が来るのはいつになるのだろうか。

文●中村光佑
 
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