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海外テニス

【雑草プロの世界転戦記8】上の舞台に這い上がるのは“自分が今できるプレーの次”をする選手だ!<SMASH>

市川誠一郎

2022.12.21

遠征先で日本選手たちと。この中からチャレンジャーやツアーレベルの大会に上がっていった選手も多い。右端が著者の市川選手。写真提供:市川誠一郎

遠征先で日本選手たちと。この中からチャレンジャーやツアーレベルの大会に上がっていった選手も多い。右端が著者の市川選手。写真提供:市川誠一郎

 25歳でテニスを始め、32歳でプロになった市川誠一郎選手は、夢を追って海外のITF大会に挑み続ける。雑草プレーヤーが知られざる下部ツアーの実情を綴る転戦記。

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 前回は、世界のテニスツアーの最底辺に位置するITFツアーにおいて、選手たちがいかに厳しいプロ活動をしているか述べました。では、そのITFツアーからATPチャレンジャーに抜け出していく選手と、通用せずに辞めていく選手ではどこが違うのでしょうか?

 選手には様々なタイプがいるので一概には言えませんが、長くツアーを回っていると、その時負けていても後々チャレンジャーやグランドスラムに上がっていきそうだと強く感じさせる選手が確かにいます。そしてそういう選手はやはり上がっていくものなのです。

 一つの特徴として、明確に自分のテニス、プレースタイルを持っていて、それをどんな時も貫いている選手がそうだと思います。一貫した方向性を出すことは長期的に成長するために非常に重要で、その時々の精神状態や目の前の勝ちを求めるが故に土壇場で軸がブレてしまう選手は、将来的に伸びないことが多いです。

 僕の個人的な感覚ですが、上に行きそうな選手は“負けていても印象に残るプレー”をします。

 特に積極的、攻撃的なプレーをする選手は、時にはミスで目の前の試合を落としますが、長いスパンで見るとスケールの大きなテニスに通じるため、チャンレンジャーやグランドスラムに届くことが多いように感じています。
 
 それは、チャレンジャーまで行った時にミスしないプレーだけでは勝てないからです。そこでは、チャンスを逃さずポイントを取り切るプレーをした上での安定感が求められます。彼らは常に“自分が今できるプレーの次”を目指しているのです。

 そうした選手はミスで目の前の試合を落としても、負けそうな時に入れに行こうとしたり、次の試合でプレーを変えたりなど、迷ったりしません。負けた直後には怒っていますが、すぐにケロリと忘れます。自分に揺らぎがないことが将来につながっているようです。

 対照的に、いくら強くても、辞めてしまう選手はわかりやすいです。

 それは心に迷いがある選手、辞めることをすぐ口にしてしまう選手です。実際にITFツアーで優勝争いをしている強豪であっても、そういう迷いが見える選手はそれ以上先に行けない傾向が見られます。

 彼らはだいたい自分の可能性を疑い始めていたり、周りと自分を比較しています。そして一つひとつの結果に対する心のアップダウンが大きいのです。

 周りを気にせず、自分の道をまっしぐらに突き進んでいる選手は、その時負けていても、遅かれ早かれブレークスルーすると感じています。

文●市川誠一郎

〈PROFILE〉
1984年生まれ。開成高、東大を卒業後ゼロからテニスを始め、32歳でプロ活動スタート。36歳からヨーロッパに移り、各地を放浪しながらITFツアーに挑んでいる。Amebaトップブロガー「夢中に生きる」配信中。ケイズハウス/HCA法律事務所所属。

【PHOTO】雑草プロの世界転戦記・チュニジアのITFツアーはこんなところ!
 

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