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【テニスストリング基礎知識】張り替えは「いつもどおり」の設定で大丈夫なのか<SMASH>

スマッシュ編集部

2022.12.23

ラケットに張られているストリング(糸)は定期的な張り替えが必要だが、張り替え時の注文の仕方はどうするべきか…。(C)Getty Images

 テニスボールはラケットを使って打ちます。けれどもボールと直接触れるのは、ラケットフレームに張られている「ストリング(糸)」です。そのため自分のラケットに張られているストリングのことを知ることは、プレーの出来を左右するとても大切なことなのです。

 知っているようで、あまり知られていないストリングのこと。そこでストリングに関する素朴な疑問をプロのストリンガー(ストリングを張る人)に訊いてみました。

 今回のテーマは「ストリング張り替え時の注文の仕方」です。ストリングは定期的に張り替えが必要な消耗品ですが、張り替えをするときに「いつもどおり」と注文している方が多くいます。はたしてこれでいいのでしょうか……。

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「いつもどおり」で注文しているということは、現在のセッティングに満足しているからだと思います。しかし、いつもどおりにしても、同じ状況でボールを打てているとは限りません。

 いつもどおりが崩れる要因の一つに気温の変化があります。例えば冬は気温が低いため、いつもどおり同じセッティングにすると、ボールのゴムが冷えて硬くなり反発力が低下するため、ボールを飛ばしづらくなります。

 野球のように硬いボールの方がよく飛んでいくように思えますが、テニスではストリングの持つ反発性と面のたわみ、ボールのつぶれた後の復元力が合わさって飛ぶので、ボールが硬くなると飛びが弱くなります。

 そこで、気温の低下に合わせて、テンション(ストリングを張る力)をいつもよりも2~3ポンド下げることをお勧めします。そうすれば、打球時のラケット面のたわみが増えるので、ボールを楽に飛ばすことができます。
 
 さらに、冬は身体が冷えるため、テンションを下げる事で身体へのダメージも減らせます。逆に気温が暖かくなれば、またテンションを2~3ポンド上げることでいつもの感覚でプレーすることができます。

 そして、もう一つ変化として考えてもらいたいのが、自身の技術の進歩や筋力の衰えなどの変化です。トップ選手でも技術や筋力に応じて、ストリングの設定を変えることがあります。ストリングの種類や張る強さによって、ボールの飛びやスピンなども変わるので、試していただくと今までは気づかなかった発見もあると思います。

 また、新しいラケットに変えた場合にも注意が必要です。全く同じラケットなら問題はありませんが、形状が同じラケットでも年代が違えば、使われている素材や機能が変わっていることが多くありますので、ストリンガーにセッティングを相談してください。

解説:鈴木貴也
プロやアマを問わず常に最高のクオリティを提供することを心掛けるプロストリンガーで、2021東京五輪のストリンギングチームの一員に選ばれている。

取材協力●テニスサポートセンター

構成●スマッシュ編集部
※2022年1月号より抜粋・再編集

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