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海外テニス

ロシア排除で大会開催権はく奪の危機にある英国協会。エバンスが「脅しても解決につながらない」とATPを痛烈批判<SMASH>

中村光佑

2023.03.02

ウインブルドンをはじめイギリスの伝統的大会が開催されない可能性も…。理不尽な制裁をエバンスは公然と批判する。(C)Getty Images

ウインブルドンをはじめイギリスの伝統的大会が開催されない可能性も…。理不尽な制裁をエバンスは公然と批判する。(C)Getty Images

 男子テニス世界ランク28位のダニエル・エバンス(イギリス)が母国の大手日刊新聞『The Times』のインタビューに登場。昨年の芝コートシーズンでロシア・ベラルーシ人選手の出場を禁止したイギリステニス協会(LTA)が、今季の英国内のツアー公式戦を開催する権利をはく奪される可能性が浮上していることに言及し、ATP(男子プロテニス協会)とWTA(女子テニス協会)を批判した。

 昨年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻はテニス界にも大きな影響を与え続けている。同年7月のテニス四大大会「ウインブルドン」(イギリス・ロンドン/芝)では、ロシアと同国の軍事攻撃を支援するベラルーシ国籍の選手の締め出しを決行。また昨夏には、英国内で芝コートのツアー大会を運営するLTAが計5つのトーナメント(うち3つは下部大会)で両国プレーヤーの出場を禁止した。

 このような侵攻国出身の選手に対する強硬措置は、ロシアとベラルーシがウインブルドンをはじめとする英国の大会をウクライナ侵攻のプロパガンダ(宣伝活動)に利用することを懸念した、イギリス政府からの助言に従ったものだった。

 ところがこれがテニス界で定める「全ての国の選手を平等に大会へ参加させる」という基本原則に反しているとの理由から、昨年7月にWTAはLTAに対して25万ドル(約3400万円)の罰金を科し、ATPも22年末に「LTAに100万ドル(約1億3700万円)の罰金を科すことを決定した」と発表。LTAはすぐさま「我々は英国政府の勧告に従っただけだ」と抗議文をリリースしたものの、両団体による不条理な決定が覆ることはなかった。

 そして先日には「ロシア・ベラルーシ人選手に対する出場禁止令を撤回できなければ、LTAは今年度のATP、WTAのツアー大会を開催する権利をはく奪される恐れがある」と、英紙『Daily Mail』が報道。すなわち今年は伝統的なトーナメントであるクイーンズ・クラブ(ATP500/芝)やイーストボーン(ATP250/芝)が開かれない可能性も否定できないというわけだ。
 
 今回のインタビューでエバンスは、ATPとWTAによる理不尽な制裁が原因で自国の権威ある大会が危機的状況に陥っていることに対して不快感をあらわにした。

「もしクイーンズが開催されなかったら悲しいことだ。僕はそんな“脅し”を好意的には捉えていない。ATPは自分たちが完璧でない以上は他人を非難しない方が良い。クイーンズは、ATPツアーのために多くのことに貢献してきた、ツアーで最も権威のある大会の1つだ」

「イギリス人選手全員に影響が出る。ワイルドカード(主催者推薦)で出場するチャンスやプレーの機会を得ることができなくなる。僕は常識が優先されるべきだと思う。我々は賢明な議論をしなければならない。LTAを脅してイベントを開催する権利を取り上げることが、解決につながるとは思えない」

 テニス系海外メディア『UBITENNIS』によれば、今年のウインブルドンや英国内のツアー大会でロシア・ベラルーシ人選手の出場を禁じるどうかについては、近々決定が下されるという。今後の動向に注目が集まりそうだ。

文●中村光佑

【PHOTO】昨年はジョコビッチが優勝。ロシア人選手除外で行なわれた2022ウインブルドンの男子スナップ集
 

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