未だ収束の兆しが見えないロシアのウクライナ侵攻は、スポーツ界にも大きな影響を与えており、無論それはテニス界も例外ではない。昨年7月のテニス四大大会「ウインブルドン」ではロシアと同国の軍事攻撃を支援するベラルーシ国籍の選手の締め出しを決行した。
その一方でその他のツアー公式戦では国名や国旗を使用しない中立の立場での大会参加を認めており、積極的に強硬措置を講じようとしないテニス界の現状には、女子世界40位のマルタ・コスチュクや、現在軍の予備役として戦場に赴いている男子元世界31位のセルゲイ・スタコフスキ氏(昨年1月に引退)をはじめとするウクライナ国籍の現役選手や、元プレーヤーから日に日に反発の声が高まる一方だ。
ところが同じくウクライナ国籍で男子ダブルス世界123位のオレグ・プリホドコは、コスチュクやスタコフスキ氏とは全く異なる見解を示している。スポーツ界で加速するロシア・ベラルーシ人アスリートへの締め出し措置に「違和感を覚えている」というのだ。
ウクライナテニス専門メディア『BTU』によると、今季すでにチャレンジャー(下部大会)の男子ダブルスで3度決勝に進出している25歳のプリホドコは、紛争開始当初から友人であるヤン・ボンダレフスキー(22歳/ダブルス334位)をはじめ、ロシア国籍の選手ともペアを組んでトーナメントに出場し続けることを決めていると語る。これについてプリホドコは以下のように詳しく説明した。
「彼(ボンダレフスキー)は私の友人だ。だからロシア人の彼と何度かプレーした。僕はその他にもロシア人の友人と2、3回ほどプレーした。僕にとって国籍は重要ではない。人は国籍ではなく、行動で判断されるべきだ」
「僕にはロシアやベラルーシの友人がたくさんいるし、僕のガールフレンドもロシア出身だ。彼らは皆、あらゆる面で僕を助けてくれて、常に戦争に反対する声を上げている。だから(侵攻国出身の人々と親密な関係を築いていることについては)、僕自身が何か恐ろしい行為をしたとは思っていない」
その後プリホドコはウクライナテニス連盟から「ロシア人選手と一緒にプレーしないようにという勧告があった」と告白。それにもかかわらず「僕にも自分の考えがあって、正しいと思うことをやった。彼らの方針に忠実に従ったわけではない」として、侵攻国出身の選手とペアを組むことを辞めようとは思わなかったと明かした。
またプリホドコは来年7月に開催されるパリ五輪でロシア・ベラルーシ人選手の出場禁止が活発に議論されていることについても不快感を示している。
「僕は一般的にアスリートに対するこのような非難が、より紛争を煽るものだと思っている。こうしてアスリートはピッチ内外で戦争を始め、戦争の道具と化し、スポーツの基本原則を忘れてしまう。
僕はアスリートとしてベラルーシとロシアの選手がオリンピックから外そうとしているその状況が理解できない。すべてのアスリートにとって、オリンピックは生涯をかけて目指してきた夢であることを理解している。僕はスポーツは人と人を結びつけるものだと信じている。古代にはオリンピックが開催されると、すべての戦争が止まったが、今はそれ(五輪)が戦争の一部になっている」
卑劣な紛争によって悲惨な状況がもたらされているウクライナの選手からこのような意見が出るのは驚きだ。それでも1つの意見としては大いに尊重されるべきだろう。
文●中村光佑
【画像】祖国の名誉を背負い日本でBJK杯を戦ったウクライナ女子代表チーム
その一方でその他のツアー公式戦では国名や国旗を使用しない中立の立場での大会参加を認めており、積極的に強硬措置を講じようとしないテニス界の現状には、女子世界40位のマルタ・コスチュクや、現在軍の予備役として戦場に赴いている男子元世界31位のセルゲイ・スタコフスキ氏(昨年1月に引退)をはじめとするウクライナ国籍の現役選手や、元プレーヤーから日に日に反発の声が高まる一方だ。
ところが同じくウクライナ国籍で男子ダブルス世界123位のオレグ・プリホドコは、コスチュクやスタコフスキ氏とは全く異なる見解を示している。スポーツ界で加速するロシア・ベラルーシ人アスリートへの締め出し措置に「違和感を覚えている」というのだ。
ウクライナテニス専門メディア『BTU』によると、今季すでにチャレンジャー(下部大会)の男子ダブルスで3度決勝に進出している25歳のプリホドコは、紛争開始当初から友人であるヤン・ボンダレフスキー(22歳/ダブルス334位)をはじめ、ロシア国籍の選手ともペアを組んでトーナメントに出場し続けることを決めていると語る。これについてプリホドコは以下のように詳しく説明した。
「彼(ボンダレフスキー)は私の友人だ。だからロシア人の彼と何度かプレーした。僕はその他にもロシア人の友人と2、3回ほどプレーした。僕にとって国籍は重要ではない。人は国籍ではなく、行動で判断されるべきだ」
「僕にはロシアやベラルーシの友人がたくさんいるし、僕のガールフレンドもロシア出身だ。彼らは皆、あらゆる面で僕を助けてくれて、常に戦争に反対する声を上げている。だから(侵攻国出身の人々と親密な関係を築いていることについては)、僕自身が何か恐ろしい行為をしたとは思っていない」
その後プリホドコはウクライナテニス連盟から「ロシア人選手と一緒にプレーしないようにという勧告があった」と告白。それにもかかわらず「僕にも自分の考えがあって、正しいと思うことをやった。彼らの方針に忠実に従ったわけではない」として、侵攻国出身の選手とペアを組むことを辞めようとは思わなかったと明かした。
またプリホドコは来年7月に開催されるパリ五輪でロシア・ベラルーシ人選手の出場禁止が活発に議論されていることについても不快感を示している。
「僕は一般的にアスリートに対するこのような非難が、より紛争を煽るものだと思っている。こうしてアスリートはピッチ内外で戦争を始め、戦争の道具と化し、スポーツの基本原則を忘れてしまう。
僕はアスリートとしてベラルーシとロシアの選手がオリンピックから外そうとしているその状況が理解できない。すべてのアスリートにとって、オリンピックは生涯をかけて目指してきた夢であることを理解している。僕はスポーツは人と人を結びつけるものだと信じている。古代にはオリンピックが開催されると、すべての戦争が止まったが、今はそれ(五輪)が戦争の一部になっている」
卑劣な紛争によって悲惨な状況がもたらされているウクライナの選手からこのような意見が出るのは驚きだ。それでも1つの意見としては大いに尊重されるべきだろう。
文●中村光佑
【画像】祖国の名誉を背負い日本でBJK杯を戦ったウクライナ女子代表チーム