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ウクライナのツレンコがWTA会長の無神経発言でパニック!「プレーできる状況ではなかった」と試合を棄権<SMASH>

中村光佑

2023.03.19

WTA会長のサイモン氏の言動にショックを受けたツレンコは「BNPパリバ・オープン」3回戦を棄権した。(C)Getty Images

 現在開催中の女子テニスツアー「BNPパリバ・オープン」でウクライナ国籍のレシア・ツレンコ(世界ランク95位)は、アリーナ・サバレンカ(ベラルーシ/同2位)とのシングルス3回戦を突如試合前に棄権したことが物議を醸していた。当初彼女は棄権を決断した理由について「個人的な事情」と説明していたが、このほどその具体的な詳細が明らかになった。

 現在もウクライナ侵攻の収束の兆しが見えない中でツレンコは、ロシアとその同盟国であるベラルーシ国籍の選手に強硬措置を講じようとしないテニス界の現状を声高に非難してきていた。

 母国ウクライナのテニス専門メディア『BTU』のインタビューで「(ウクライナ侵攻に関する)数日前の会談で、WTA(女子テニス協会)の会長であるスティーブ・サイモン氏から告げられた言葉にショックを受けてパニック発作を起こしてしまい、プレーができる状況ではなかった」と告白。さらにこう続けた。

「サイモン氏自身は戦争を支持していないとのことだったけど、ロシアやベラルーシの選手が紛争を支持しているのであれば、それはあくまで彼ら自身の意見であり、あなたが他人の意見に動揺してはいけないと言われた。同時に、もしこれが自分の身に起こっていたら恐ろしいと思うだろうとも言っていた」
 
 現地3月12日に行なわれた女子シングルス3回戦では、ロシア国籍のアナスタシア・ポタポワ(28位)が、試合開始前のウォークオンで母国のサッカークラブ「スパルタク・モスクワ」のユニフォームを着用し、各方面から批判の言葉が殺到した。

 現役選手では、世界女王のイガ・シフィオンテク(ポーランド)が「このような状況下であんな形で自分の考えを示すべきでないということを選手たちは理解していると思っていたから、正直言って驚いたわ」とポタポワを糾弾していた。

 ただ同時にシフィオンテクは「こういうことが起こる前に手を打つべきだった」とも主張し、未然に騒動を防げなかったBNPパリバ・オープンの主催側や、WTAを暗に非難するコメントも残していた。ツレンコが『BTU』に語った内容を加味すれば、WTAのウクライナ侵攻に対するスタンスが気になるところである。

 これについて先日英公共放送『BBC』の取材に応じたサイモン氏は「我々はできる限りのことをしていて、アスリートたちに対しても多くのことをやってきたが、それに対してはさまざまな意見がある」と前置きしつつも、「ウクライナで起きていることは、非難されるべきことだ。ロシア政府がやっていることも含めて、どのような形であれ、支持することはできない」と弁明。またすでに各種メディアで報じられた通り、「ユニフォームを着用したポタポワにも厳重注意を行なった」と明かした。

 テニスを含めスポーツ界に大きな影響を与え続けているロシアのウクライナ侵攻。以前のような平穏な日々が戻ってくるのはいつになるのだろうか。

文●中村光佑

【PHOTO】祖国の名誉を背負い日本でBJK杯を戦ったウクライナ女子代表チーム