海外テニス

元王者ベッカーが故障続きのラドゥカヌを危惧。計3カ所に及んだ手術は「キャリアを脅かすものだ」<SMASH>

中村光佑

2023.05.25

重鎮ベッカー氏(左)はラドゥカヌ(左)が両手首と足首を手術したことについて不安を口にする。(C)Getty Images

 四大大会通算6勝を誇る男子テニス元世界ランク1位のボリス・ベッカー氏(ドイツ/55歳)がイギリスの大手日刊新聞『The Guardian』のインタビューに登場。長く不振が続く女子元10位のエマ・ラドゥカヌ(イギリス/20歳/現106位)に言及し、「彼女の行く末を心配している」とコメントした。

 ラドゥカヌと言えば2021年の全米オープンで予選から全てストレート勝ちを収めて四大大会初優勝を果たし、女子テニス界に衝撃を与えた。だがそれ以降はほとんど結果を残せておらず、23年シーズンに入ってからは度重なるケガや体調不良に苦しめられている。

 3月の「BNPパリバ・オープン」(WTA1000)ではベスト16に進出し復調を予感させたが、同時期には右手首の痛みに悩まされていたという。欧州クレーシーズンに入ってからはコンディションが悪化し、4月末に出場を予定していた「マドリード・オープン」(WTA1000)を右手首の負傷を理由に欠場。翌週のランキングでは全米優勝後初めてトップ100から陥落した。

 どうやらラドゥカヌは手首だけではなく足首にも痛みを抱えていたようで、今月2日に更新した自身の公式SNSでは「両手首と足首の手術を施しました」と報告。さらに四大大会の「全仏オープン」と「ウインブルドン」の欠場を正式に表明した。

 ベッカー氏は先日ラドゥカヌが受けた計3カ所の手術が、今後の彼女のパフォーマンスに悪影響を与えてしまうのではないかと自身の見解を語る。「私の考えでは、彼女が受けた手術はキャリアを脅かすものだと思う。両手打ちの選手として、両手首、さらには足首を手術することは、若い女子選手には耐え難いものだ」と心配のコメントを寄せた。
 
 またラドゥカヌは全米以降、短期間で次々とコーチを変更してきたことで多大な批判の声を浴びてきた。だがこれについてベッカー氏は「私は彼女の側近ではないから、指導者が変わったという事実を知っていても、その全ての事情を知っているわけではない」と回答を回避。四大大会を制したことで追われる立場となった今も、さらなる飛躍を遂げるために模索している段階にあるとして、ラドゥカヌにエールを送るかのようにこう続けた。

「テニスというのは失うものがない時は誰でもいいプレーができる。でも追われる側になると全く別ものになる。若い女子選手が突如山のトップに立ったから、マインドセットや才能、チーム、競技へのアプローチ、そして自分を取り巻く状況に関して、今後10年間で自分をいい方向に導いてくれる人々を見つけなければならない。

 彼女は、それができなかった最初の人ではない。そして最後の人となるわけでもないだろう。もし彼女が一度でも四大大会で優勝する実力が十分にあったのなら、もう一度それを成し遂げるのにも十分な実力があるということだ」

 なかなか明るい光が見えてこない今の状況は、もっと強くなりたいと望むラドゥカヌにとって心底つらいものだろう。それでもまだまだキャリアは長いだけに、しっかりとケガを治したうえで力強いカムバックを遂げてほしいものだ。

文●中村光佑

【30コマの超連続写真】テイクバックが身体の前面に収まっているラドゥカヌのフォアハンド