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【伊達公子】ウインブルドンの芝の特徴は?日本人選手にとって相性が良い理由<SMASH>

伊達公子

2023.07.07

「イレギュラーとコードボールには誰もが悩まされます」と言う伊達公子さん。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

 テニス四大大会「ウインブルドン」が、イギリスのロンドンで行なわれています。テニスの聖地であるウインブルドンの最大の魅力は芝というサーフェスです。
 
 芝では打点が低くなり、イレギュラーが多く、コードボールになるとネットインするというのが大きな特徴です。キレのあるスライスは滑るため有効で、ビッグサーバーはエースが取りやすいので強いですね。昔ほどサーブ&ボレーヤーは多くはありませんが、ラリーになっても短く終わる傾向にあります。

 ポジションはベースライン近くに上げて、攻撃的なプレーが多くなります。クレーではかなり後方でプレーすることがあるナダルでさえ、芝ではベースライン近くまで上げていました。

 打点が低いので、日本人選手にとっては相性の良いサーフェスでもあります。日本の砂入り人工芝は跳ねませんし、日本のハードコートは基本的に速くて跳ねないので、低い打点でボールを捉えることに慣れているためです。昔から日本人選手は全仏オープンよりも、ウインブルドンの予選を上がる確率の方が高いですね。今回も、ラッキールーザーを含めて5名の選手が予選を突破し、本戦入りを果たしています。

 クレー育ちの選手たちは高い打点に慣れているため苦労しますし、グリップが厚いと低い打点で打つのが難しいので、芝で苦戦する選手は結構います。
 
 ただし、イレギュラーとコードボールには誰もが悩まされます。ネットの張り具合が柔らかいため、コードボールはポトンと落ち、反応してダッシュしても取れないことはよくあります。イレギュラーも大きく跳ねる時もあれば、急に止まったり、滑るものもあり様々です。

 1年ぶりに芝の大会に戻ってきた時には、もうその感覚を忘れています。最初は久々の芝にワクワクしながら練習を開始しますが、3日ぐらいするとイライラします。イレギュラーに対する順応がまだできていないんです。それを、イレギュラーしてもコードボールが落ちて間に合わなくても、イラつかないように、段々と慣れていくわけです。

 また、強いキレのあるボールは滑りますが、遅く緩いボールはポッコンと跳ねて伸びてこないため、相手のボールに合わせて対処しなくてはいけません。クレーでは横の動きが多いですが、芝では前への動きが多くなります。芝の表面が柔らかいため筋肉の表面より奥の方の張りが強く股関節やお尻が疲れますし、腰も張るため、ケアの必要が出てきます。

 ウインブルドンでは前に行く攻撃的なプレーと共に、選手たちがイレギュラーに対して、どう対応しているかも見てみてください。

文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン

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