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海外テニス

華やかなウインブルドンの舞台裏で飛び交う“ロシア・ベラルーシ勢”に対する政治判断を巡る是非<SMASH>

内田暁

2023.07.06

全仏オープンでルカシェンコ大統領の不支持を明言したサバレンカは、今大会の会見で「政治のことには言及しない」と宣言。(C)Getty Images

全仏オープンでルカシェンコ大統領の不支持を明言したサバレンカは、今大会の会見で「政治のことには言及しない」と宣言。(C)Getty Images

 センターコートに足を踏み入れた時も、そして勝利の瞬間も、彼女を迎え入れたのは、温かな万雷の拍手だった。

「ここが、私にとってどれだけ大切な場所か、今この瞬間まで自分でも気が付かなかったほど」

 感極まったためか、それともまだ解けぬ緊張のためか。こわばった表情と幾分かすれる声が、彼女が「とてもナーバスだった」事実を物語った。

 今大会の女子テニスシングルスで、第2シードにしてベラルーシのナンバー1選手のアリーナ・サバレンカにとって、ウインブルドンの芝を踏むのは2年ぶり。昨年は、同大会の「ロシアとベラルーシの選手の出場を禁ずる」方針のため、参戦は叶わなかったからだ。

 それから1年経った今年、ウインブルドンはロシアおよびベラルーシ選手たちの参戦は認めている。ただ両国の選手たちには、「国を代表するものではないこと」「国もしくは国営の企業等のサポートを受けないこと」などの誓約書へのサインを求めた。この誓約に従い、世界12位のベロニカ・クデルメトワは、2年前から支援を受けているオイル会社「タトネフチ(Tatneft)」のスポンサーパッチを、今大会ではつけていない。タトネフチはロシア軍に物資提供等を行なっているため、EUでは制裁措置の対象となっているからだ。
 
 先日の全仏オープンでのサバレンカは、ウクライナの記者からルカシェンコ大統領との関係を詰問され、「ロシアのウクライナ侵攻に対する立ち位置」を明瞭にすることも求められた。そのために同大会では、試合後の会見を2度スキップ。「身の危険を感じるから」との理由であり、それを大会側も認めたがゆえの処置だった。

 今回のウインブルドン開幕前の会見。冒頭でサバレンカは、「政治のことには言及しない。もし私の意見を知りたい人は、過去の大会の会見内容を参照してほしい」と宣言した。

 サバレンカの言う「過去の大会の会見内容」とは、具体的には全仏オープン準々決勝後の会見を指すだろう。この席でサバレンカは、これまでの「誰も戦争を望んでいない」という一般論的発言から、より主体的に「私は、戦争を望まない」と明言した。さらには、「ルカシェンコを支持するのか?」との質問には、次のように答えている。

「私は戦争を望まない。ルカシェンコは戦争を支援している。だから私は、今のルカシェンコは支持できない」……と。

 この会見でのやり取りやサバレンカへの質問に関しては、プレスルームでも意見が割れた。「あの質問は行き過ぎだ」という人もあれば、「質問内容は正当だ」との声もある。
 
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