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ケガからの完全復活を目指すラオニッチが過酷な身体づくりについて語る「最初の4週間で約18キロ痩せた」<SMASH>

中村光佑

2023.07.09

ウインブルドン2回戦で敗退したラオニッチは「今後の生活は全く違ったものにしたい」と現役引退後のプランについても言及した。(C)Getty Images

 現在開催中のテニス四大大会「ウインブルドン」の男子シングルス2回戦で姿を消した元世界ランク3位のミロシュ・ラオニッチ(カナダ/現849位)が試合後のインタビューに登場。ケガからの完全復活へ向け、過酷な減量に取り組んできたことを明かした。

 2021年にふくらはぎを負傷し、同年7月の「アトランタ・オープン」(ATP250)2回戦で敗退して以降は戦線を離脱していたラオニッチ。その後も度重なるケガによりなかなかツアーに復帰できない日々が続いていたが、懸命なリハビリの甲斐もあり、先月中旬にプロテクトランキング(負傷離脱前のランキングで大会にエントリーできる救済措置)で出場した「リベマ・オープン」(ATP250)で待望のカムバックを遂げた。

 以前には「引退も考えたことがあった」と明かしていたラオニッチだが、現役続行を諦められなかったのには理由があったという。それこそが16年に四大大会初の決勝進出を果たした思い出のウインブルドンでもう一度プレーすることだったのだ。ツアー復帰を目標に掲げる中で「身体づくりに徹底的に取り組んだ」と語る。その詳細については以下のように説明した。

「1年間、ジムでウェイトトレーニングばかりしていた。結果的に筋肉をつけすぎて以前のように有酸素運動ができなくなり、少し身体が重くなってしまった。それで減量を始めて、最初の4週間で40ポンド(約18キロ)痩せた。最も健康的な方法とは言えなかったかもしれないけど、徐々に体重を減らすやり方ではもう無理だったから極端な方法を取ることにした。食事面では普通のスカートステーキ(牛の横隔膜を使った平らな肉)を1日1枚食べてからは他に何も食べず、水だけを飲んでいた」
 
 地道に努力を重ねてきたラオニッチにとって、再び神聖な芝のコートでプレーできたのは特別な瞬間だったはずだ。大きな喜びを胸に臨んだ現地7月5日の1回戦では第1セットを落としながらも粘りのプレーを見せてデニス・ノバク(オーストリア/159位)に6-7(5)、6-4、7-6(5)、6-1の逆転で勝利。だが翌6日(悪天候によりスケジュールが変更)の2回戦では第16シードのトミー・ポール(アメリカ/15位)に4-6、6-7(4)、7-6(4)、4-6で敗れた。

 19年大会以来4年ぶりとなるウインブルドンでの戦いを終え、ラオニッチは次のようにコメントした。

「全体的にはポジティブなものだったけれど、短期的に見ればここが違っていたらと思うようなこともあった。それでも約2年の離脱を経てここに戻れたことがうれしいよ。

 正直、今日の2回戦もそれほど競った試合ではなかった。スコア的には競っているように見えるかもしれないが、2セット半の間、僕はポイント間でほとんど歩いていた。楽しい試合ではなかったけど、荒れた状況を最大限に生かそうとした」

 一方で現在の心境としては、この先もまだまだ現役にこだわりたいというわけではないと明かす。「ウインブルドンは今年が最後になるだろう」と発言した32歳の名手は、「願わくは、今後の生活は全く違ったものにしたい。公の場でテニスをプレーしてきたが、常に注目されることを楽しんできたわけじゃない。僕は自分の中に閉じこもっているのが好きなんだ」とも述べ、近い将来での現役引退についても含みを持たせた。

 海外メディア『UBITENNIS』によると、ラオニッチは来月に母国で開催される「ナショナル・バンク・オープン」(8月7日~13日/カナダ・モントリオール/ATP1000)への出場を目指しているが、具体的な今後のプランについては明言を避けたという。ひとまず今は心身をリフレッシュしてほしいものだ。

文●中村光佑

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