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「スポーツウーマンシップの言葉がうれしかった」全仏OP混合ダブルス優勝の加藤未唯が地元京都で栄誉賞をダブル受賞<SMASH>

内田暁

2023.07.25

地元京都から表彰を受け「よい報告ができた」と加藤未唯(左側は門川大作市長、右側は西脇隆俊府知事)。写真:内田暁

「あ、かわいい」

 町を歩いている時、ショーウィンドウに立つマネキンの姿に、思わず目を奪われた。吸い寄せられるように店に入ると、マネキンが着ていた服を上下揃いで購入する。

 5月下旬。全仏オープンを控えた日のパリでの、ささやかながらもうれしい出来事だった。

 それから、約2か月後――。

 パリで出会ったその服に身を包み、加藤未唯は真夏の京都にいた。

 京都は、彼女が生まれ育った町。世がコロナ禍に包まれた3年前には、「子どもたちに世界1位を目指す夢を抱いてして欲しい」の願いを込めて、市に「111万1,111円」を寄付したこともある。

 その故郷に、練習やスポンサーへのあいさつ回り等の合間を縫って帰省したのは、京都市庁と京都府庁、さらには東本願寺で行なわれた表彰式に参席するためである。

 表彰の内容は、全仏オープン混合ダブルス優勝の栄誉を称えるものだった。
 
 京都市から受賞したのは、『スポーツ最高栄誉賞』。門川大作市長は「選手としてだけでなく、人間的素晴らしさ、日本人らしさを世界に発信して頂いた」と表彰理由を説明。

「子どもたちのために寄付して頂いたことや、小学校に桜を寄贈してい頂いた」ことにも、改めて謝意を示した。

 その言葉を受け、加藤は「3年前に寄付した時は、みんなに1位を目指して欲しいという想いを数字に込めた。そのためにも、まずは自分が1位にならなくてはと思っていた」と当時を回想。

「だからこそ今回、良い報告ができたことで、ちょっと安心できました。そこは優勝できて、すごく良かったところでもあります」

 そう言い、晴れやかな笑みを広げた。
 
 京都府から授与されたのは、『スポーツ特別栄誉賞』。西脇隆俊知事は記念の盾等を手渡すとともに、「プレッシャーもすごかったと思うが、素晴らしい"スポーツウーマンシップ"をみせてくれた」との言葉を伝えた。

 後に加藤は、知事からのこの言葉を、「すごくうれしかった」と噛みしめる。その背景には、全仏オープンでボールキッズにボールを当てたため、失格と罰金に処されたことがあった。

「大会(全仏)には、スポーツマンシップに反した行為とされただけに、知事にそう言って頂けたことは、心の支えになりました。あまり言って頂く機会がないことだったので、すごくうれしかったです」

 さらに加藤は、混合ダブルス優勝直後に、ボールガールのもとを訪れたことにも言及。

「大会の方にお願いして、会う機会を作ってもらいました。まずは彼女が、ボーラーを続けてくれていたことにすごく安心しました。彼女からは『実は自分のお父さんもボーラーをやっていた』という話を聞いて、テニス選手が親からテニスを習ったみたいに、ボーラーもそうやって伝わっていくのは良いなと思いました」
 
 母校に桜を寄贈したことや、市の子どもたちのために寄付したことにも象徴されるように、加藤は地元への愛情が濃く、町に根付く精神の担い手である子どもたちへの想いも強い。

 ちなみに偶然ではあるが、パリは京都の姉妹都市。その「大好きな町」で経た「酸いも甘いもあった経験」の数々を、結果的に生まれ育った町に還元できたことは、加藤にとって何よりもの喜びだったはずだ。

取材・文●内田暁

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