海外テニス

アルカラスのブレークを2年前に予言していたマリー。根拠はフェレーロとの会話「僕にはそれで十分だった」<SMASH>

中村光佑

2023.08.10

マリー(右)はアルカラス(左)がまだトップ50に入る前から、将来的に大成すると予言していた。ちなみに2人の対戦は2021年に2度あり、1勝1敗だ。(C)Getty Images

 2018年のプロ転向から数々の成功を収め、20歳にして世界ランク1位に君臨するカルロス・アルカラス(スペイン)。そんな若き俊才の活躍を予言していたのが、四大大会で3度の優勝を誇る元1位のアンディ・マリー(イギリス)だ。

 今から2年前、マリーはATP(男子プロテニス協会)公式サイトのインタビューで「次世代の選手でナンバー1になるのは誰か?」と問われた際、「今だったら、ダニール・メドベージェフ(ロシア/当時2位)だろうね。彼は、クレーコートでもう少し安定したプレーをする必要があると思うが、チャンスは十分にあるだろう」と回答していた。

 このインタビューからわずか数週間後、メドベージェフは全米オープンで四大大会初優勝を達成。昨年2月末には自身初の世界1位をマークし、04年2月のアンディ・ロディック(アメリカ)以来約18年ぶりにビッグ4(ジョコビッチ、フェデラー、ナダル、マリー)以外の選手が王座に就くという快挙を成し遂げた。

 一方でメドベージェフよりも若い選手の中からマリーが将来性のある選手に挙げていたのが、この時はまだトップ50にも入っていなかったプロ3年目のアルカラスだった。「彼はとてもいい選手。彼にもチャンスはあると思うよ」というマリーの言葉に応えるかのように、ニューヒーローは驚異的なスピードで成長を遂げていく。

 昨季はマイアミとマドリードのマスターズ2大会を制した上、19歳で出場した全米で初のグランドスラムタイトルを獲得。今季も好調を維持し、先月のウインブルドンでは決勝で大会5連覇を狙ったノバク・ジョコビッチ(セルビア/現2位)に競り勝ち、殊勲の四大大会2勝目を手に入れた。
 
 なぜマリーは「どんな選手なのかよく知らなかった」というアルカラスに大きな期待を寄せたのか? その理由について、マリーは先週応じたATPのインタビューで「過去に彼のコーチであるホアン・カルロス・フェレーロ(スペイン/元世界1位)と話をしたことが関係している」と説明する。

 マリーがフェレーロに、アルカラスはテニスが好きなのかを尋ねたところ、「そこが彼の長所だ。彼は夢中だよ」と言われたという。その上でこう明かした。

「彼(アルカラス)の試合を見たり、また彼のコーチや、ハードワークとはどういうものかを知っている人から、彼には素晴らしいキャリアを歩む可能性があると聞いた。(活躍を予言するのに)僕にはそれで十分だった」

 またマリーは「自由にプレーしている」アルカラスを本当に気に入っていると言う。「彼がその自由なプレースタイルを続けていく姿を見たいね。ドロップショットやサーブ&ボレー。ちょっと神がかったように見えることもあるが、あれは完全に本能的にやっているものだ。それが彼の大好きなところだ」と改めてアルカラスの魅力を語った。

 若くして「すでに完成されたプレーヤー」とも評されているアルカラス。誰もがうらやむその才能を遺憾なく発揮し、次代のテニス界を牽引していってほしい。

文●中村光佑

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