25歳でテニスを始め、32歳でプロになった市川誠一郎選手は、夢を追って海外のITF大会に挑み続ける。雑草プレーヤーが知られざる下部ツアーの実情を綴る転戦記。
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ヨーロッパのテニス環境についてリポートするシリーズ。前回はジュニア選手に焦点を当て、上を目指すためのルートを紹介しましたが、今回はその続きです。
良し悪しは別として、近年はジュニア選手もとても現実的にキャリアプランを描くケースが多くなっています。自分の戦績や価値観と向き合い、強い選手でもプロではなく、早くからアメリカの大学にテニスの奨学金で進学することを念頭に置き、テニスを使って学歴を得るというキャリアにシフトする選手もいます。
一方、日本人選手は、これほど情報が出回っている時代なのに、プロを目指すトップジュニアですら、こうした当たり前の認識を持っている人は少ないように感じます。グランドスラムに出たいと言いながら、彼ら自身、何歳でどんな大会に出て、どんな結果を出すのか、本当にぼんやりとしか世界が見えていないのです。
グランドスラムに行くための成長イメージを聞くと、ジュニアでトップ100に入りたい、18歳で国際下部ツアーで少しずつ勝ちたい、などと、具体的なステップアップのスピード感をわかっておらず、かなりのんびりしたビジョンを持っているケースをよく見かけます。
自分に必要な試合を選んで経験を積み上げていくスケジューリングも、ヨーロッパ選手と比べるとかなりのんびりしています。
ドイツ、フランス、スペインなどでは一般(大人)の国内大会が非常に充実しており、ジュニア期もジュニア大会には出場せず、一般国内大会を中心にプレーして成長していく選手も多くいます。
国内大会であれば膨大な遠征費用を節約できる上、選手の多いエリアなら、夏の間は毎週複数の大会に出場できるほどたくさん数があるため、国外を転戦するよりも試合経験を積めるのです。試合はもちろん3セットマッチ形式で、コンソレーションを行なう大会もあります。
こうした試合環境を求めて、海外の選手もヨーロッパ各国の国内大会に出場しています。出場には日本同様、各国のテニス団体への登録が必要ですが、それさえクリアすればどの国の選手も出場可能です。
そうした事情もあり、国内大会でもレベルはかなり高く、カテゴリーが上がれば、国際ツアーに出場している世界ランカーも名を連ねます。それどころか、以前グランドスラムに出場していたような選手が賞金稼ぎとして出場することもしょっちゅうあるほどです。ヨーロッパの選手層は非常に厚いですね!
これに加え、以前書いたクラブリーグも様々なカテゴリーで開催されています。選手は自分のレベルや要望に合わせて、思う存分試合に挑戦できる環境が整っているわけです。
文●市川誠一郎
〈PROFILE〉
1984年生まれ。開成高、東大を卒業後ゼロからテニスを始め、32歳でプロ活動開始。36歳からヨーロッパに移り、各地を放浪しながらITFツアーに挑んでいる。2023年5月、初のATPポイントをダブルスで獲得。Amebaトップブロガー「夢中に生きる」配信中。ケイズハウス/HCA法律事務所所属。
【PHOTO】雑草プロの世界転戦記・ヨーロッパのテニスアカデミーでの日常風景
【PHOTO】ヨーロッパのテニス文化を象徴する「クラブリーグ」の情景集
【雑草プロの世界転戦記14】上を目指すビジョンが明確化されたヨーロッパのジュニア育成環境<SMASH>
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ヨーロッパのテニス環境についてリポートするシリーズ。前回はジュニア選手に焦点を当て、上を目指すためのルートを紹介しましたが、今回はその続きです。
良し悪しは別として、近年はジュニア選手もとても現実的にキャリアプランを描くケースが多くなっています。自分の戦績や価値観と向き合い、強い選手でもプロではなく、早くからアメリカの大学にテニスの奨学金で進学することを念頭に置き、テニスを使って学歴を得るというキャリアにシフトする選手もいます。
一方、日本人選手は、これほど情報が出回っている時代なのに、プロを目指すトップジュニアですら、こうした当たり前の認識を持っている人は少ないように感じます。グランドスラムに出たいと言いながら、彼ら自身、何歳でどんな大会に出て、どんな結果を出すのか、本当にぼんやりとしか世界が見えていないのです。
グランドスラムに行くための成長イメージを聞くと、ジュニアでトップ100に入りたい、18歳で国際下部ツアーで少しずつ勝ちたい、などと、具体的なステップアップのスピード感をわかっておらず、かなりのんびりしたビジョンを持っているケースをよく見かけます。
自分に必要な試合を選んで経験を積み上げていくスケジューリングも、ヨーロッパ選手と比べるとかなりのんびりしています。
ドイツ、フランス、スペインなどでは一般(大人)の国内大会が非常に充実しており、ジュニア期もジュニア大会には出場せず、一般国内大会を中心にプレーして成長していく選手も多くいます。
国内大会であれば膨大な遠征費用を節約できる上、選手の多いエリアなら、夏の間は毎週複数の大会に出場できるほどたくさん数があるため、国外を転戦するよりも試合経験を積めるのです。試合はもちろん3セットマッチ形式で、コンソレーションを行なう大会もあります。
こうした試合環境を求めて、海外の選手もヨーロッパ各国の国内大会に出場しています。出場には日本同様、各国のテニス団体への登録が必要ですが、それさえクリアすればどの国の選手も出場可能です。
そうした事情もあり、国内大会でもレベルはかなり高く、カテゴリーが上がれば、国際ツアーに出場している世界ランカーも名を連ねます。それどころか、以前グランドスラムに出場していたような選手が賞金稼ぎとして出場することもしょっちゅうあるほどです。ヨーロッパの選手層は非常に厚いですね!
これに加え、以前書いたクラブリーグも様々なカテゴリーで開催されています。選手は自分のレベルや要望に合わせて、思う存分試合に挑戦できる環境が整っているわけです。
文●市川誠一郎
〈PROFILE〉
1984年生まれ。開成高、東大を卒業後ゼロからテニスを始め、32歳でプロ活動開始。36歳からヨーロッパに移り、各地を放浪しながらITFツアーに挑んでいる。2023年5月、初のATPポイントをダブルスで獲得。Amebaトップブロガー「夢中に生きる」配信中。ケイズハウス/HCA法律事務所所属。
【PHOTO】雑草プロの世界転戦記・ヨーロッパのテニスアカデミーでの日常風景
【PHOTO】ヨーロッパのテニス文化を象徴する「クラブリーグ」の情景集
【雑草プロの世界転戦記14】上を目指すビジョンが明確化されたヨーロッパのジュニア育成環境<SMASH>