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海外テニス

【雑草プロの世界転戦記10】小規模アカデミーは環境面で劣るが、きめ細かな指導を受けられるのが特長<SMASH>

市川誠一郎

2023.03.07

市川選手(左端)がかつて所属していたスペインの中規模アカデミーでは、世界1位を指導したこともあるコーチが自らバンを運転し、選手をアカデミーまで送ってくれたという。写真提供:市川誠一郎

市川選手(左端)がかつて所属していたスペインの中規模アカデミーでは、世界1位を指導したこともあるコーチが自らバンを運転し、選手をアカデミーまで送ってくれたという。写真提供:市川誠一郎

 25歳でテニスを始め、32歳でプロになった市川誠一郎選手は、夢を追って海外のITF大会に挑み続ける。雑草プレーヤーが知られざる下部ツアーの実情を綴る転戦記。

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 ヨーロッパの練習環境についてリポートするシリーズ。前回は大規模アカデミーの充実した施設や対応を紹介しました。

 それに対して小規模アカデミーは、1~3人程度のコーチで回しており、選手も本格的な活動をしている人は数人、その他にジュニアが何人か……というような環境です。自分のコートやジムを持っておらず、どこかのテニスクラブのコートを借りて使っているケースも多いです。

 そういう小規模アカデミーでは決まった宿泊先もなく、コーチのアパートに滞在したり、コーチのコネクションを使ってアパートを探すことになります。また、ビザに関するサポートまでは受けられないことが多く、そうなると日本人選手の長期滞在にはビザの取得が大きな障壁になってきます。

 小規模アカデミーでフルタイム練習すると、費用は安いところなら月1,500ユーロ(約217,000円)程度。大きなアカデミーだと月3,000ユーロ(約434,000円)以上かかるところも珍しくないので、だいぶ格安です。

 中~大規模アカデミーになると、たいてい選手はレベルごとにグループ分けされ、そのグループごとに練習することになります。これがアカデミーの難しい点で、特に大きいアカデミーに所属する場合、余程のトップ選手かアカデミーに期待されている選手でない限りトップチームには入れません。せっかくいい選手がたくさんいるアカデミーであっても、結局彼らと練習する機会はないわけです。
 
 またコーチもたくさんいるため、毎回担当コーチが変わったり、きめ細かな指導が受けづらい面もあります。

 基本的にはアカデミーの方からオファーされるトップ選手を除けば、力のあるヨーロッパ人選手は巨大なアカデミーではなく、小中規模の力のあるアカデミーにいるか、専属コーチと契約していることが多いと感じます。

 小規模アカデミーはだいたいコーチの汚い(?)車であちこちのコートに移動しながら練習したり、ジムもなく、一見不安に感じるかもしれませんが、比較的コーチが選手全員を把握していて、家族的な雰囲気があったり、選手それぞれの細かな部分を考慮した指導を受けられます。

 とはいえ、小規模アカデミーであっても、やはりグループ分けをされることは多く、アカデミーの下のレベルの選手になると、様々なチャンスが少なくなりがちです。何より選手自身が下のグループに入れられてしまうことで、常に劣等感を感じてしまう環境に置かれるのが大きな問題です。

文●市川誠一郎

〈PROFILE〉
1984年生まれ。開成高、東大を卒業後ゼロからテニスを始め、32歳でプロ活動スタート。36歳からヨーロッパに移り、各地を放浪しながらITFツアーに挑んでいる。Amebaトップブロガー「夢中に生きる」配信中。ケイズハウス/HCA法律事務所所属。

【PHOTO】雑草プロの世界転戦記・ヨーロッパのテニスアカデミーでの日常風景
 

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