国内テニス

【伊達公子】日本人選手の国内ツアー大会の有意義な活用法。ジュニアや指導者は世界を見るべき<SMASH>

伊達公子

2023.09.29

「見て学ぶこと」に取り組むべきと言う伊達公子さん。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

 国内開催の女子テニスツアー大会「東レ パン パシフィック オープンテニス」が有明で行なわれています。残念ながら今年はシングルスで本戦ダイレクトインできた選手が、日比野菜緒選手だけで1回戦負けという結果でした。

 日本のテニス選手にとって国内でのツアー大会は、慣れ親しんだコートや雰囲気の中でプレーができるのでやりやすい環境にあります。逆にヨーロッパやアメリカの選手にとっては、1年の疲労が出てくるころで、頭も疲れてきておりプレーが単調になりがちです。だからこそ、秋のアジアシリーズは、アジア人選手にとって大きなチャンスであり、それをもぎ取れるかどうかは選手次第です。

 国内のツアー大会では、ワイルドカードが日本人選手に与えてもらえる可能性が高くなります。本戦で1回でも勝てればジャンプアップできますが、勝てない場合はポイントになりません。私は現役の時、コーチの指示で本戦ワイルドカードをお断りして、予選のワイルドカードから出場したことが何度もありました。

 そもそもレベルの高い大会でのワイルドカードになれば、当然簡単には勝たせてもらえません。予選であれば本戦よりも調子が良ければ予選を勝ち抜くことができて、それが大きな自信になりますし、試合を重ねることでリズムも出てきて、ポイントも確実に取れるからです。本戦のワイルドカードをもらいスタートラインに立つのはいいですが、本戦でプレーしたことをアピールするだけでは意味がありません。
 
 今まで行なってきたことがツアーレベルで通用する段階であり、ワイルドカードで試合に出て何を得て、今後どういう方向に向かっていきたいかを、しっかりと把握した上でワイルドカードのチャンスをどう生かすのかを考えて出場しなくてはもったいないですね。

 世界を目指しているジュニア選手や指導者は、ツアー大会を見に行くべきです。世界のテニス界は目まぐるしく変化しています。今のトップ100で何が起こっているのかを知っておくことは大事です。

「今のテニスはこうだから、こういうことができないといけない」ということを踏まえた上で、課題に取り組むべきです。日本のジュニアは打つ練習ばかりを行ないがちで、トレーニングやケア、オフの取り方の意識が低い傾向にあります。せっかく世界のトップ選手のプレーが見られるのですから、見て学ぶことをしていきましょう。

 メンタリングを行なうと、「緊張した時はどうしたらいいんですか?」という質問がよく出てきます。悩んでいるのに、世界レベルの選手がどうしているかを見ようとしないのは不思議でなりません。トップ選手の行動を見ることで、ヒントが見つかるはずです。

文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン

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