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海外テニス

出産を経て復帰した大坂なおみが2年ぶりに全豪オープンの舞台へ!「以前よりもはるかにポジティブ」<SMASH>

内田暁

2024.01.14

全豪オープンにスペシャルランキング(妊娠・出産を経た選手に与えられる救済措置)で出場する大坂なおみは、初戦の世界20位ガルシア戦に向けて「自分のプレーができるのではと思う」と意気込みを語った。(C)Getty Images

全豪オープンにスペシャルランキング(妊娠・出産を経た選手に与えられる救済措置)で出場する大坂なおみは、初戦の世界20位ガルシア戦に向けて「自分のプレーができるのではと思う」と意気込みを語った。(C)Getty Images

 大会開幕を2日後に控え、多くのトッププレーヤーたちが会見に応じる“メディアデー”の昼下がり――。

 メインインタビュールームに集まった記者の数が、関心の高さを物語った。会見時間が迫っている選手は、2度の全豪オープン優勝者の大坂なおみ。昨年のこの時期に妊娠を公にし、2週間前のブリスベン国際で1年3カ月ぶりにコートに帰還した元世界1位の登場を、各国のプレスが待ちわびた。

 開始予定時間を少々回り、会見室に姿を現した大坂は、少し疲れているように見えた。それでも、質問者の中に見慣れた顔を見つけるたび、目じりを下げて「ハイ」「久しぶり」と、柔らかな声を上げる。向けられる内容は、テニスの調子から子育て体験までと幅広い。その一つひとつに大坂は、質問の意味を咀嚼するように小さくうなずき、時に答えを探すように視線を虚空に漂わせながら、丁寧に言葉を紡いだ。

 ブリスベンでの試合後は、思っていたよりは筋肉痛や疲労感が残らなかったこと。

 全豪オープン会場に足を踏み入れた時は、ノスタルジーに胸が満たされたこと。

 会場ではトップ選手たちと練習を重ね、リターンとバックハンドの向上に留意していること。

 そして、「ツアーからしばし離脱していたことで、良かったと感じることはあるか」との問いには、しばし視線を落とし、言葉の真意が相手に伝わっているか確かめながら、こう応じた。
 
「私はこれまでにも、何度も休養を取ってきたけれど、今回ようやく、私の中で何かが嚙み合ったと感じている。アスリートにとって、時間がいかに貴重なものかに気が付くことができた。以前の私は若く、いつでも元の場所に戻れると思っていた。でもシャイ(第一子)を産んだ後は、求める状態に戻ることが、いかに大変かを感じている。

 今の私は、以前よりもはるかにポジティブで、周囲に感謝の気持ちを抱いている。去年の全豪オープンに出られなかったことを思うと、今はとにかく、ここにいられることがうれしいの」

 出産とラケットを握らぬ日々を経た今は、「身体の状態は、以前と同じというわけにはいかない」とも認める。ただその詳細に関しては、「フィットネストレーナーに尋ねた方が、良い答えが得られると思う」と笑って交わした。

 なお、彼女のフィットネストレーナーのフロリアン・ジツェルスバーグ氏は、昨年11月、米国人記者のデビッド・ケイン氏の取材に対し、次のように答えている。

「ナオミは素晴らしい攻撃力の持ち主ですが、ここ10年ほどのテニス界では、守備の重要性が増しています。攻守の切り替えが非常に大切になっているのです。

 ナオミが再び最高のパフォーマンスを発揮するため、まず取り組んだのは、運動連鎖を安定させること。特に腹部の筋力は、産後に落ちるのが一般的ですから」

 全豪会場で身体を動かす大坂は、トレーナーの言葉に耳を傾け指導に従おうとするも、思うように動かぬ自分の身体に、苦笑いを浮かべることもある。

 自他ともに認める身体の変化は、アスリートとしての時間の有限性を大坂に告げ、その悟りに似た認識は、今この時を慈しむ心持ちにつながるのだろう。

 初戦の対戦相手は、世界20位のカロリーヌ・ガルシア(フランス)。まごうことなきトッププレーヤーではあるが、大坂は「試合を通じ、自分のプレーができるのではと思う」との予感を胸に、2年ぶりにグランドスラムのコートに向かう。

現地取材・文●内田暁

※大坂の初戦は現地15日のナイトセッションに予定されている

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