25歳でテニスを始め、32歳でプロになった市川誠一郎選手は、夢を追って海外のITF大会に挑み続ける。雑草プレーヤーが知られざる下部ツアーの実情を綴る転戦記。
―――◆―――◆―――
日本とヨーロッパのテニス環境を比較した時、コートサーフェスも大きな違いとして挙げられます。
ヨーロッパに来れば、基本的には国際的にメインに使われるサーフェス、レッドクレーでプレーすることになります。砂入り人工芝コートはイギリスやアイルランドなどにしかなく、どういうサーフェスか知らない選手もいるくらいです。
レッドクレーはバウンドが非常に高く、スピン、スライスのバウンド変化が大きいので、戦術的な組み立てがはるかに重要になります。
対照的に砂入り人工芝はスピンの変化が少なく、またバウンドが低いために、スライスがかなり有効なサーフェスと言えます。球足も遅いため、ペース変化を有効に使ったり、積極的に攻める戦術よりも、粘って多く返球する選手が勝ちやすい。
肩より高い打点で打つことの多いレッドクレーに比べ、ヒザ下で打つことが多い砂入り人工芝は、ベースラインで攻撃的に戦う現代的なテニスでは勝ちづらいサーフェスなのです。
このように、サーフェスによってやるべきテニスは全く変わってきます。レッドクレーにしても球足は遅く、ラリーがかなり長く続きますが、バウンドが高いうえにドロップショットは止まりますから、前後の動きがかなり大きくなります。イレギュラーも常にあり、変化に対応する技術、フットワーク、バランスがかなり求められるわけです。
これまで、ヨーロッパを拠点にするメリットを色々と挙げてきましたが、レッドクレーという国際標準のサーフェスでプレーできることも、間違いなくその1つと言えるでしょう。
テニスはヨーロッパで生まれ、育まれたスポーツです。ベースボールにボールパークという文化があるように、テニスにはテニスクラブという文化が存在します。
ヨーロッパにはかなり小さな街にもテニスクラブがあり、以前紹介したように、週末のクラブリーグには会員さんが家族で集まり、テニスをしたり、コート前のカフェや芝生で自分のクラブを応援して休日を過ごす文化があります。
テニスはそれぞれの街に根付いていて、地域の企業や裕福な人たちがクラブをサポートする文化もあり、地域全体の中にテニスが存在します。
ヨーロッパでは、単純に勝った負けたの競技だけではない、より豊かなテニスを感じることができるのです。
文●市川誠一郎
〈PROFILE〉
1984年生まれ。開成高、東大を卒業後ゼロからテニスを始め、32歳でプロ活動開始。36歳からヨーロッパに移り、各地を放浪しながらITFツアーに挑んでいる。2023年5月、初のATPポイントをダブルスで獲得。Amebaトップブロガー「夢中に生きる」配信中。ケイズハウス/HCA法律事務所所属。
【PHOTO】ヨーロッパのテニス文化を象徴する「クラブリーグ」の情景集
【PHOTO】雑草プロの世界転戦記・ヨーロッパのテニスアカデミーでの日常風景
【PHOTO】雑草プロの世界転戦記・チュニジアのITFツアーはこんなところ!
―――◆―――◆―――
日本とヨーロッパのテニス環境を比較した時、コートサーフェスも大きな違いとして挙げられます。
ヨーロッパに来れば、基本的には国際的にメインに使われるサーフェス、レッドクレーでプレーすることになります。砂入り人工芝コートはイギリスやアイルランドなどにしかなく、どういうサーフェスか知らない選手もいるくらいです。
レッドクレーはバウンドが非常に高く、スピン、スライスのバウンド変化が大きいので、戦術的な組み立てがはるかに重要になります。
対照的に砂入り人工芝はスピンの変化が少なく、またバウンドが低いために、スライスがかなり有効なサーフェスと言えます。球足も遅いため、ペース変化を有効に使ったり、積極的に攻める戦術よりも、粘って多く返球する選手が勝ちやすい。
肩より高い打点で打つことの多いレッドクレーに比べ、ヒザ下で打つことが多い砂入り人工芝は、ベースラインで攻撃的に戦う現代的なテニスでは勝ちづらいサーフェスなのです。
このように、サーフェスによってやるべきテニスは全く変わってきます。レッドクレーにしても球足は遅く、ラリーがかなり長く続きますが、バウンドが高いうえにドロップショットは止まりますから、前後の動きがかなり大きくなります。イレギュラーも常にあり、変化に対応する技術、フットワーク、バランスがかなり求められるわけです。
これまで、ヨーロッパを拠点にするメリットを色々と挙げてきましたが、レッドクレーという国際標準のサーフェスでプレーできることも、間違いなくその1つと言えるでしょう。
テニスはヨーロッパで生まれ、育まれたスポーツです。ベースボールにボールパークという文化があるように、テニスにはテニスクラブという文化が存在します。
ヨーロッパにはかなり小さな街にもテニスクラブがあり、以前紹介したように、週末のクラブリーグには会員さんが家族で集まり、テニスをしたり、コート前のカフェや芝生で自分のクラブを応援して休日を過ごす文化があります。
テニスはそれぞれの街に根付いていて、地域の企業や裕福な人たちがクラブをサポートする文化もあり、地域全体の中にテニスが存在します。
ヨーロッパでは、単純に勝った負けたの競技だけではない、より豊かなテニスを感じることができるのです。
文●市川誠一郎
〈PROFILE〉
1984年生まれ。開成高、東大を卒業後ゼロからテニスを始め、32歳でプロ活動開始。36歳からヨーロッパに移り、各地を放浪しながらITFツアーに挑んでいる。2023年5月、初のATPポイントをダブルスで獲得。Amebaトップブロガー「夢中に生きる」配信中。ケイズハウス/HCA法律事務所所属。
【PHOTO】ヨーロッパのテニス文化を象徴する「クラブリーグ」の情景集
【PHOTO】雑草プロの世界転戦記・ヨーロッパのテニスアカデミーでの日常風景
【PHOTO】雑草プロの世界転戦記・チュニジアのITFツアーはこんなところ!