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【伊達公子】いじめられた高校時代。新生活がうまくいかないのは当たり前<SMASH>

伊達公子

2024.03.15

「心が折れる要素はたくさんありました」と言う伊達公子さん。写真:THE DIGEST写真部

 期待に胸を膨らませて始まった新生活。思い描いていたように進めばいいですが、うまくいかなかった時は、どう対処しますか? まずは、うまくいかなくて当たり前だということを理解しておきましょう。期待通りに進める人は1割いるか、いないかではないでしょうか。

 実際、私もうまくいかなかった1人です。寮生活に憧れて、テニスができる高校に行くことを決めましたが、いじめにあいました。入学当初はレギュラーも保証されていない私が、強くなり始めたことが大きなきっかけだったのではないかと思います。テニス部の同年代の寮生ほぼ全員とある日突然、完全に距離ができました。食事も今まで一緒に食べていたのに、声も掛からなくなり1人でポツンです。

 救いだったのは、大学生の寮に中高生の特待生が入っている状態だったことです。同じフロアに幼児教育課の大学生がおり、彼女たちと一緒に過ごすことができました。部活動の時間は寮生以外の学生もいましたし、卑屈にならずにすみました。

 それでも、当然楽しくはないですし、心が折れる要素はたくさんありました。しかし、自分で選んだ高校ですから、仕方がありません。親に泣きついたところで、「自分が選んだんでしょ」と言われることはわかっていました。いじめを乗り越えられた要因は、自分で決断したことへの自分自身への責任、そして意地ですね。
 
 つらい状況に陥った人にアドバイスするなら、視野を広げましょうということです。いじめられていることは、小さいこととは思えません。でも、ちょうどテニスが強くなり始めている時で、やるべきことがあったから耐えられたのだと思います。自分のやりたいことまで失っては元も子もない。相手の思い通りになってはいけないと思って踏ん張れたのだと思います。

 学生だけでなく、社会に出ると嫌なことは当然あるでしょう。そういう時、会社を変える人もいます。自分の目標を達成するために、ここにいるべきではないと思ったら辞めてもいいですが、嫌なことがあるから辞めるというのは違うと思います。それでは転職を繰り返すことになるのではないでしょうか。

 新しい環境で何かを始める時は、ある程度忍耐が必要です。加えて、新人の時は「これは自分には必要ない」と頑なにならずに、興味がないことに対しても取り組んでみること。そうして自分の世界を広げることで、何かを決断する時に柔軟性のある選択ができるようになります。自分の小さい世界に留まらず、知識を広げる機会だと考えましょう。

文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン

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