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海外テニス

大坂なおみが元世界5位エラーニを破り2回戦進出!「ドーハと比べれば、大きな前進」と自分自身に及第点<SMASH>

内田暁

2024.03.08

今大会では愛娘を帯同して参戦している大坂が四大大会に次ぐグレードの「BNPパリバ・オープン」の初戦(写真)を突破した。(C)Getty Images

今大会では愛娘を帯同して参戦している大坂が四大大会に次ぐグレードの「BNPパリバ・オープン」の初戦(写真)を突破した。(C)Getty Images

 会見室に大坂なおみが姿を現したのは、試合を終えセンターコートを離れてから、約30分後のことだった。それはいつもの彼女のルーティーンに比べれば、異例なほどに早い。

 理由を探るヒントは、会見のなかで明らかになる。

 テニスツアー「BNPパリバ・オープン」開催地の米インディアンウェルズは、彼女の住むロサンゼルスから車で2~3時間の距離。そこで今大会の大坂は、生後8カ月の愛娘を滞在先に連れてきたのだ。

 子どもがいることで、日々のルーティーンは変わったか――? 

 そう問われた大坂は、「もちろん家を出る前は、可能な限り多くの時間を子どもと過ごしている」とほほ笑み、こう続ける。

「でも彼女は、とっても規則正しい赤ちゃんだから、離れていても、何をしているのかわかるのよね。例えば今は……」

 そう言い手首の時計をのぞき込み、弾けるような笑みを広げて言った。

「ちょうど、そろそろ食事の時間なの! 部屋に戻るのが待ち遠しいわ!」

 娘の食事に間に合うように戻りたい――恐らくはそれが、いつもより早い会見の理由だ。

 コートを離れれば早くも母親の顔を見せる大坂だが、コートに立っている時は、本人曰く「常時アスリート」。頭を占めるのはテニスのみで、目指すはひたすら勝利のみだ。

 その思考面で言えば、初戦は難しい試合となる。相手のサラ・エラーニ(イタリア)は、元世界5位の36歳。ランキングこそ100位に落としてはいるが、いかにもクレー育ちといった試合巧者っぷりと、粘り強さは健在だ。

 何より、滞空時間の長いエラーニのショットは、復帰後の大坂が複数回対戦してきたカロリーヌ・ガルシア(フランス)やカロリーナ・プリスコワ(チェコ)たちの強打と大きく異なる。
 
「正直、どのようにプレーすれば良いか戸惑った。彼女と打ち合いチャンスを待つのか、それとも即座に自ら決めにいくべきか。その答えを見つけるのに時間が掛かり、それが第1セットで競った理由だと思う」

 そのような述懐通り、試合序盤の大坂は、相手を力でねじ伏せようとしては、ショットがラインを割るシーンが目立った。風の影響もあったか、ダブルフォールトも多い。早々にブレークを許し、追う展開となった。

 それでも追いつき逆転まで持ち込めるのは、復帰後わずか3カ月の彼女が、既に高い適応力と、地力を取り戻したからに他ならない。追いつ追われつの展開のなか、リターンウィナーを叩き込み第8ゲームをブレークすると、そのまま第1セットを6-3で先取した。

 第2セットに入った時には、「落ち着き、自分のプレーに集中できるようになった」と振り返るほどに、大坂が試合を支配する。最終スコアは、6-3、6-1。課題としていたフットワークについても、「前後に揺さぶられても良く動けていた」と自信を滲ます。

「(2週間前の)ドーハと比べれば、大きな前進」と、己に厳しい彼女が自身に及第点を与えた。

 大会開幕前、「今大会では私の中で、母親とアスリートのエネルギーが融合している。それが良い方向に向かえば」との希望的見解を口にしていた大坂。

 その予兆実現の気配を存分に漂わせ、6年前の優勝者が、力強く、なおかつしなやかに好スタートを切った。

現地取材・文●内田暁

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