海外テニス

大坂なおみ、過去3連勝中の相手に“パワー”で押し切られる!「作戦があったのに遂行することができなかった」<SMASH>

内田暁

2024.03.12

出産により約1年間のブランクがある大坂は、今回の敗戦を通じてよりパワフルになった女子テニス界の進化を痛感させられた。(C)Getty Images

 会見室に訪れた大坂なおみの、目は赤く充血しているように見えた。

 それでも記者たちからの質問には、頷きながら耳を傾け、丁寧に応じていく。時おり笑みを浮かべ、重苦しい雰囲気にならないように努めているようでもあった。

 現在開催中の「BNPパリバ・オープン」(アメリカ・インディアンウエルズ/WTA1000)の3回戦で、エリーズ・メルテンスに5-7、4-6で敗れた、1時間ほど後のことである。

 メルテンスは現在シングルス28位、ダブルスでは1位に座す実力者。それを思えば2時間の熱戦の末の敗戦そのものは、そこまでショックを受けるべきものではないように思える。ましてや大坂は、昨年7月に出産したばかり。慣例的には、まだコートに戻るのも早い時期だ。

 それでも大坂は自分のプレーに満足できず、同時に、3連勝中だった相手のプレーの進化に衝撃を受けているようだった。

「作戦があったのに、それを遂行することができなかった。彼女とは長く対戦していなかったので、今日は彼女のプレーに驚かされることもあった」と、大坂が思いを吐露する。
 
 大坂がメルテンスと最後に対戦したのは、2021年のマイアミ・オープン。その時は大坂がストローク戦で優位に立ち、6-3、6-3の快勝を手にしていた。

 それから3年――。今回の対戦で大坂は、「常に守備に追われていたように感じた」と言う。

「自分から攻撃したかったのに、守備に回ることが多く、いつものように重いボールを打つことができなかった。それにサーブの面でも、彼女には驚かされた。最後に対戦した時よりも、スピードが上がっていると思うしバックハンドを狙われた」

 それが大坂が、戦前のプラン通りに試合を運べなかった理由であった。

 この大坂の言葉を、試合後の会見で伝え聞いたメルテンスは、「確かに作戦としては、彼女を守勢に回し、多く走らせることだった」と述懐する。

「テニスは、守っていては勝てない方向に進んでいる……そうでしょ?」

 そう言い彼女は、ほがらかに笑った。

 メルテンスのこの言質は、示唆に富む。
 
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出産を経て大きく変わった大坂だが「でもね…」