柴原瑛菜が女子テニスツアー「BNPパリバ・オープン」(アメリカ・インディアンウェルズ/WTA1000)でアジア・ムハンマド(アメリカ)と組むのは、2年前のこの大会以来だった。その時は、初めてのペアでいきなりの決勝進出。
そして今回、約1年半ぶりに組んだムハンマドと共に、柴原は再びベスト4に勝ち進む。準決勝ではストーム・ハンター(オーストラリア)/カテリナ・シニアコワ(チェコ)組に敗れたが、準々決勝では第5シードのココ・ガウフ/ジェシカ・ペグラ(アメリカ)から殊勲の星も手にしていた。
それでも柴原は、「来週のマイアミ・オープンには出ない」という。今大会に出たのも、ロサンゼルスに住む彼女にとってここは「ホームのような大会」だから。今の彼女のフォーカスは、あくまで、シングルスにある。
元より今季は、シングルスに力を入れると決めて挑んだ勝負の年。不動のパートナーだった青山修子と一端のペア解消をしたのも、そのためだ。実際に今季は既にシングルスでITF4大会に出場し、2大会で準決勝進出。そして先々週のテキサス大会(賞金総額3万5000ドル)では、シングルス初優勝をも手にした。
この結果が持つ意義を、柴原は喜び以上に「ちょっと安心した」の言葉で言い表した。
「シングルスに集中して頑張ると決めたけれど、やっぱり結果が出ないと自信にもつながらない。今年4大会目で優勝できたので、徐々に『やっていけるな』という気持ちなってきました」
柴原の現在のダブルスランキングは、21位。対して、今シーズンを迎えた時のシングルスは548位だった。ダブルスなら世界最高峰の大会に出場し、良い待遇を受けることもできる。だがシングルスで出場するITF大会は、設備や運営規模、そして賞金面でもグランドスラムやツアー大会には遠く及ばない。その現実を知った上でシングルスを選ぶのは、勇気のいることでもある。「安心した」の言葉には、そのような背景も投影されているだろう。
2年前にシングルスに挑戦した時は、ダブルスとの違いに戸惑いを覚えたと言った。特に、打つコースがある程度限定されるダブルスに比べ、シングルスの選択肢の多さにむしろ困惑したという。
その時の反省も踏まえ、今回はコーチと共にシングルスの練習を積み、特にポイントパターンをくり返してきた。結果、「身体に動きが染み込んだので、Instinct(本能)で打てるようになった」と、つむぐ言葉も力強い。
実戦を多く重ねたことで、シングルスならではの戦い方や思考様式も習得しはじめている。
「シングルスは、100%パーフェクトではなくても、どうにか勝つことができる。ストロークが悪ければ、足で走って勝とうとか。試合が長いしずっと良い状態ということも多分ないので、その波の中で、どうやって低い時でも勝てるのか? それを考えながらやるのが、すごく楽しいんです」
そう言い彼女は、顔中に笑みを広げた。
今大会後は日本に向かい、甲府市と柏市開催のITF2大会を経て、国別対抗戦“ビリージーンキングカップ”に日本代表として出場。その後も日本に留まり、東京と岐阜市開催のITF大会への出場を予定している。
来週発表の単ランキングでは、400位以内がほぼ確実。当面の目標は、年内に200位を切り来年1月の全豪オープン予選に出場すること。そしていずれは、シングルスでもダブルスと同じステージに立つべく、険しい道を進んでいく。
現地取材・文●内田暁
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そして今回、約1年半ぶりに組んだムハンマドと共に、柴原は再びベスト4に勝ち進む。準決勝ではストーム・ハンター(オーストラリア)/カテリナ・シニアコワ(チェコ)組に敗れたが、準々決勝では第5シードのココ・ガウフ/ジェシカ・ペグラ(アメリカ)から殊勲の星も手にしていた。
それでも柴原は、「来週のマイアミ・オープンには出ない」という。今大会に出たのも、ロサンゼルスに住む彼女にとってここは「ホームのような大会」だから。今の彼女のフォーカスは、あくまで、シングルスにある。
元より今季は、シングルスに力を入れると決めて挑んだ勝負の年。不動のパートナーだった青山修子と一端のペア解消をしたのも、そのためだ。実際に今季は既にシングルスでITF4大会に出場し、2大会で準決勝進出。そして先々週のテキサス大会(賞金総額3万5000ドル)では、シングルス初優勝をも手にした。
この結果が持つ意義を、柴原は喜び以上に「ちょっと安心した」の言葉で言い表した。
「シングルスに集中して頑張ると決めたけれど、やっぱり結果が出ないと自信にもつながらない。今年4大会目で優勝できたので、徐々に『やっていけるな』という気持ちなってきました」
柴原の現在のダブルスランキングは、21位。対して、今シーズンを迎えた時のシングルスは548位だった。ダブルスなら世界最高峰の大会に出場し、良い待遇を受けることもできる。だがシングルスで出場するITF大会は、設備や運営規模、そして賞金面でもグランドスラムやツアー大会には遠く及ばない。その現実を知った上でシングルスを選ぶのは、勇気のいることでもある。「安心した」の言葉には、そのような背景も投影されているだろう。
2年前にシングルスに挑戦した時は、ダブルスとの違いに戸惑いを覚えたと言った。特に、打つコースがある程度限定されるダブルスに比べ、シングルスの選択肢の多さにむしろ困惑したという。
その時の反省も踏まえ、今回はコーチと共にシングルスの練習を積み、特にポイントパターンをくり返してきた。結果、「身体に動きが染み込んだので、Instinct(本能)で打てるようになった」と、つむぐ言葉も力強い。
実戦を多く重ねたことで、シングルスならではの戦い方や思考様式も習得しはじめている。
「シングルスは、100%パーフェクトではなくても、どうにか勝つことができる。ストロークが悪ければ、足で走って勝とうとか。試合が長いしずっと良い状態ということも多分ないので、その波の中で、どうやって低い時でも勝てるのか? それを考えながらやるのが、すごく楽しいんです」
そう言い彼女は、顔中に笑みを広げた。
今大会後は日本に向かい、甲府市と柏市開催のITF2大会を経て、国別対抗戦“ビリージーンキングカップ”に日本代表として出場。その後も日本に留まり、東京と岐阜市開催のITF大会への出場を予定している。
来週発表の単ランキングでは、400位以内がほぼ確実。当面の目標は、年内に200位を切り来年1月の全豪オープン予選に出場すること。そしていずれは、シングルスでもダブルスと同じステージに立つべく、険しい道を進んでいく。
現地取材・文●内田暁
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