「芝自体に対してやりづらさはなくなってきましたが、少しでも躊躇したらうまくいかないシーンもあった。自分がやるべきことをもう少し割り切ってやり続けることを、もっと形にしていきたいなと思います」
このコメントを耳にした時、多くの人が連想するのは、敗戦後の弁ではないだろうか?
実際にはこれは、青山修子の女子テニスツアー優勝後の言葉。
オランダのスヘルトーヘンボスで開催された「リベマ・オープン」は、青山と柴原瑛菜ペアにとっての今季芝開幕戦。
2回戦の頃までは「まだ心地よくない」と言い、一つひとつ課題に取り組んできた2人は、気づけば頂点に君臨していた。
優勝にもなお己に厳しい青山に対し、柴原の表情は柔らかい。
「毎試合、私のゴールは、前の日よりも少しでも良くなろうということ。もう目の前のポイントに集中し、その時々にどうやったらうまくなるのかを考えてやっていたら、うまくいった。毎回そういう感じで、自分にきつくなりすぎずテニスをやったら、結果も良かったです」
柴原のこの言葉が暗示するのは、先の全仏オープンでは、どこかで自分らしさが出せなかったという悔い。
「そうですね、やっぱり全豪オープンで決勝に行ったぶん、もうちょっといいプレーをしたいと思ってしまった。ミスした時に、気持ちが重くなりすぎちゃったかなっていう…」
全仏オープンは昨年、混合ダブルスで優勝した良い思い出の染み込む場所でもある。
「今年は、女子ダブルスで優勝」という自身への過度な期待は、いつもポジティブな柴原の心持を、どこか重くしていたようだ。
結果、全仏では2回戦敗退。だからこそ今大会に入る前は、「気持ちを切り替えた」と柴原は言う。
「芝(のコート)は、どうしてもミスが多くなる。自分に厳しくなるのは簡単なので、そうならないように意識した」
そのような自覚的な意識の変化が、さっそく奏功したことを彼女は素直に喜んだ。
プレー面で言うと、今大会でよく耳にしたのが、安藤将之コーチがコートサイドから飛ばす「欲しがらない!」という助言だった。
その真意を尋ねると、安藤コーチは「相手のミスを欲しがらない」の意だと解説する。
「相手のミスを期待すると、どうしてもボールを入れにいってしまう。そうではなく、自分から取りに行くという意識を持たせたい」
そのための“声掛け”だった。
その声が聞こえると、青山も「自分がボールを入れにいっていたことに気づかされる」という。
「どんなに強い選手でも、ポイントを欲しがってボールを置きにいったり、相手のミスをどこかで期待するところはあると思います。でもミスを期待して消極的になると、自分の強みをなくしてしまう。そういうところを気を付けないと、流れが一気に変わったりもします」
そのような流れの反転は、スピード感のある芝では特に起きやすい。優勝してもなお緩む気配のない青山の緊張感は、そのような芝の怖さを知るがゆえに、いつも以上に大会を通じて気持ちを張り詰めていたからだろう。
とはいえ、優勝した夜くらいは軽く祝勝会かと思いきや、「明日ベルリンに移動なので、今晩はパッキングです」と2人は苦笑いをこぼす。
アウトプット時の印象こそ異なるが、青山と柴原に通底するのは、常に「次」を見据えてポジティブな姿勢。
芝シーズンの最終地点であるウインブルドンまで、まずは全力で走りぬける。
現地取材・文●内田暁
【画像】青山/柴原ら、世界で戦う熱き日本人プレーヤーたち!
このコメントを耳にした時、多くの人が連想するのは、敗戦後の弁ではないだろうか?
実際にはこれは、青山修子の女子テニスツアー優勝後の言葉。
オランダのスヘルトーヘンボスで開催された「リベマ・オープン」は、青山と柴原瑛菜ペアにとっての今季芝開幕戦。
2回戦の頃までは「まだ心地よくない」と言い、一つひとつ課題に取り組んできた2人は、気づけば頂点に君臨していた。
優勝にもなお己に厳しい青山に対し、柴原の表情は柔らかい。
「毎試合、私のゴールは、前の日よりも少しでも良くなろうということ。もう目の前のポイントに集中し、その時々にどうやったらうまくなるのかを考えてやっていたら、うまくいった。毎回そういう感じで、自分にきつくなりすぎずテニスをやったら、結果も良かったです」
柴原のこの言葉が暗示するのは、先の全仏オープンでは、どこかで自分らしさが出せなかったという悔い。
「そうですね、やっぱり全豪オープンで決勝に行ったぶん、もうちょっといいプレーをしたいと思ってしまった。ミスした時に、気持ちが重くなりすぎちゃったかなっていう…」
全仏オープンは昨年、混合ダブルスで優勝した良い思い出の染み込む場所でもある。
「今年は、女子ダブルスで優勝」という自身への過度な期待は、いつもポジティブな柴原の心持を、どこか重くしていたようだ。
結果、全仏では2回戦敗退。だからこそ今大会に入る前は、「気持ちを切り替えた」と柴原は言う。
「芝(のコート)は、どうしてもミスが多くなる。自分に厳しくなるのは簡単なので、そうならないように意識した」
そのような自覚的な意識の変化が、さっそく奏功したことを彼女は素直に喜んだ。
プレー面で言うと、今大会でよく耳にしたのが、安藤将之コーチがコートサイドから飛ばす「欲しがらない!」という助言だった。
その真意を尋ねると、安藤コーチは「相手のミスを欲しがらない」の意だと解説する。
「相手のミスを期待すると、どうしてもボールを入れにいってしまう。そうではなく、自分から取りに行くという意識を持たせたい」
そのための“声掛け”だった。
その声が聞こえると、青山も「自分がボールを入れにいっていたことに気づかされる」という。
「どんなに強い選手でも、ポイントを欲しがってボールを置きにいったり、相手のミスをどこかで期待するところはあると思います。でもミスを期待して消極的になると、自分の強みをなくしてしまう。そういうところを気を付けないと、流れが一気に変わったりもします」
そのような流れの反転は、スピード感のある芝では特に起きやすい。優勝してもなお緩む気配のない青山の緊張感は、そのような芝の怖さを知るがゆえに、いつも以上に大会を通じて気持ちを張り詰めていたからだろう。
とはいえ、優勝した夜くらいは軽く祝勝会かと思いきや、「明日ベルリンに移動なので、今晩はパッキングです」と2人は苦笑いをこぼす。
アウトプット時の印象こそ異なるが、青山と柴原に通底するのは、常に「次」を見据えてポジティブな姿勢。
芝シーズンの最終地点であるウインブルドンまで、まずは全力で走りぬける。
現地取材・文●内田暁
【画像】青山/柴原ら、世界で戦う熱き日本人プレーヤーたち!