海外テニス

様々なアクシデント乗り越えたアルカラスが「BNPパリバ・オープン」連覇達成!<SMASH>

内田暁

2024.03.20

前年大会決勝の再現となったメドベージェフとの対戦を制し、タイトル防衛に成功したアルカラス。(C)Getty Images

 思い返せば、カルロス・アルカラス(スペイン)にとって今年の男子テニスツアー「BNPパリバ・オープン」(アメリカ・インディアンウェルズ)は、つくづく困難・珍事続きの大会だった。

 それらは、決勝戦の7-6(5)、6-1というスコアにも、6試合で計41ゲーム、2セットを失ったという数字にも、映しきれはしないだろう。
 
 2月末の「リオ・オープン」(ブラジル・リオデジャネイロ)では、試合中に足首を捻って棄権。数日は練習ができず、今大会の出場さえ危惧されていた。

 果たして1回戦免除で迎えた2回戦では、40位のマテオ・アルナルディ(イタリア)にセットを奪われるスタート。

 最終的には逆転勝利を手にしたが、昨年のウインブルドン以来ツアー優勝のない前年優勝者の連覇は、前途多難かに見えた。

 以降は調子を上げていくも、準々決勝のアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)戦では"蜂の襲撃"により試合が中断。前頭部を刺されるという、あまりに予期せぬ事態に見舞われた。

 準決勝のヤニック・シナー(イタリア)戦でも、砂漠の町に降る豪雨により、試合が2度の中断。

 それでもアルカラスは、アクシデントを乗り越えるたびに新たな強さを獲得するかのごとく、勝利を重ね頂点に立った。
 
 特に準々決勝以降の3試合では、アルカラスの才気煥発がコートで爆ぜる。

 驚異のコートカバーから叩き込むパッシングショット、快音轟かせコートに突き刺さるウイナー、そして強打を警戒し下がる相手の裏をかく柔らかく残酷なドロップショット――。

 それらのスーパーショットが決まるたび、彼は少年のように無邪気な笑みを顔中に広げる。その姿が観客を熱狂させ、大歓声が20歳の若者にエネルギーを注ぐ、選手とファンの好循環もそこにはあった。

 とりわけ特大の笑顔は、決勝戦のスーパープレーで花開く。ダニール・メドベージェフ(ロシア)が上げたロブに頭上を抜かれたアルカラスだが、背走し振り向きざまに放ったショットが絶妙なロブに。懸命にラケットを伸ばし放つメドベージェフのスマッシュをも打ち返したアルカラスは、最後はフォアのパッシングショットをライン際に叩き込んでみせたのだ。

 直後、耳に手を当てファンの歓声を求めるアルカラス。

「いつも言っているように、笑顔になっている時、こういうプレーが飛び出す時、僕はますます良いプレーができるようになるんだ」

 その言葉を証明するように、このプレー以降のアルカラスは頂点へ向け加速した。
 
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優勝後の記者会見でもハプニングに見舞われるアルカラス