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【伊達公子】ナダルのラスト全仏OPは見逃し厳禁。錦織はツアー完全復帰に期待<SMASH>

伊達公子

2024.05.24

アルカラスの「クレーでのプレーは特に引き付けられるものがあります」と言う伊達公子さん。写真:THE DIGEST写真部

 5月26日から全仏オープンテニスが始まります。クレーコートの頂点に立つのは誰でしょうか? 女子はナンバー1のイガ・シフィオンテク(ポーランド)が最有力候補でしょう。クレーでのフットワーク、スタミナがあり、攻撃力、コートの使い方もうまい選手です。クレーでは頭一つ抜け出ており、3連覇の可能性も十分にあります。

 対抗できるのは、全豪オープンで2連覇を達成したアリーナ・サバレンカ(ベラルーシ)でしょうか。彼女のプレーはハード向きですが、パワーで押し切れる可能性があります。ただし、クレーでの戦いとなると、シフィオンテクを苦しめるには、プラスの何かがないと難しいでしょう。

 女子で注目しているのは16歳のミラ・アンドレーワ(ロシア)です。昨年は予選を突破して3回戦にまで進出しています。しつこいプレーができる選手ですし、身体がそれほど大きくないので1発に頼るタイプでもありません。昨年好成績を出している大会なので、43位にまでランキングを上げている今年なら「もっと上に行ける」と思うタイプです。今年も勝ち進むかもしれません。

 今大会で男子の注目と言えばラファエル・ナダル(スペイン)です。1回戦で第4シードのアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)との対戦になりました。今年がラストシーズンだと宣言していますから、これが最後の全仏オープンとなるわけです。クレーシーズンに入り復活しましたが、フィジカル的には本当に厳しいと思います。どこまで身体が持つのかなとの心配もあります。

 また、クレーシーズンが終わるとナダルのモチベーションもどうなるかわかりません。今シーズン最後まで戦うことができるのかも不明でしょう。クレーキングの最後の全仏オープンでの戦いは1試合も見逃さずに見たいところです。
 
 男子の優勝予想は難しいですね。ビッグ3が崩れて、次がなかなかいないと思っていたら、カルロス・アルカラス(スペイン)が出てきて、またノバク・ジョコビッチ(セルビア)が強くなり、現在に至っています。

 ヤニック・シナー(イタリア)やホルガー・ルネ(デンマーク)もいますが、全仏オープンに優勝しそうなイメージが湧きません。前哨戦ではキャスパー・ルード(ノルウェー)やステパノス・チチパス(ギリシャ)、アレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)が活躍しており、誰が勝ってもおかしくない状況に入っていると思います。

 アルカラスが前哨戦を右腕の痛みで欠場しましたが、これが全仏オープンを見据えた前向きな欠場だったとしたら、優勝候補は彼になるでしょう。クレーでのプレーは特に引き付けられるものがあります。

 クレーコートといえば、左右に走らされたり、ドロップショットで前に走らされるという見方をする人が多いと思います。アルカラスはそれだけでなく、自分のポジションを上げたり下げたり、色々と変えているんです。

 そして、コートの後方からでもパワーとスピードを生かした、攻撃力の高いショットを打てます。そんな選手は他にはいません。ナダルが下がって打つショットとは、まったく種類が違います。走らされた時も、広いスタンスでスライディングしますし、その脚力を見るだけでも、恐ろしいほどのフィジカルの強さがわかります。コートカバーリング力と攻撃力のバランスがとても優れています。 

 そして錦織圭選手に全仏オープンで期待するのは、ツアー完全復帰になってほしいなということです。年齢的にも試合数をこなすと故障が出てきやすくなるけれど、試合数はこなしたいというジレンマが出てきます。下部大会だとポイントも低いですし、そこを早く抜けてツアーの中に入れるところまで持っていかないとつらくなります。少しでも良い条件で戦う方が調整はしやすいので、身体の不安を感じずに存分にパフォーマンスを発揮でき、可能性を広げる大会にしてほしいと願います。

文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン

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