テニス選手の多くは、常に身体のどこかに痛みや違和感がある状態でプレーしています。WTAツアーではPTと言われるフィジオ(理学療法士)とマッサージセラピストも一緒にツアーを回っていて、常に選手を多く診ています。ケガをしている選手もいれば、ケガをしないためにケアをする選手、最小限にとどめるために対処する選手、テーピングを常に必要とする選手など利用するケースはそれぞれです。
しかし当然ながら、理想は痛みがない状態でプレーできることです。私のセカンドキャリアは、ケガが付きまといました。何度もケガをし、何度も決断に失敗しました。
大きな故障はヒザでした。試合後に腫れていることに気付き、その時には水が溜まっていたんです。冷静に振り返ると、数年に1度の頻度で「ヒザがぼてっとしているな」と感じたことが2、3回ありました。翌日には引いている程度の違和感でしたが、それがサインだったんです。異変が起き始めており、その時にMRIを取っていれば、簡単な対処法ですんでいたかもしれません。
身体のサインを見逃さずに、何かあったらすぐにMRIを撮ることです。画像は嘘をつきません。画像を撮るには、予約して診断してもらい、練習の時間もずらして…と煩わしいことがあります。しかし、それをしておいた方が、結果的に大ごとになることを回避できたり、回復が早いということにつながりやすくなります。
何も問題がなければ、心配材料がなくなり安心できます。トレーナーも他の要因を判断しやすくなりますし、わからないままでは練習をセーブしたりと無駄な時間になってしまうこともあります。
どんな痛みの時に行動に移すべきなのか、最初はわからないかもしれません。肉離れの前兆なのか、強度の筋肉痛なのかの区別は難しいものがあります。経験の浅いジュニアならなおさらです。それでも異変を感じたらMRIは撮ることを勧めます。特に関節内の痛みの場合は、絶対に撮るようにしましょう。
ケガの症状が、緊急事態ではないけれど続けると悪化するという場合、選手は休みたくありません。しかし、思い切って休むべきです。無理して試合をすると、結局一番長引きます。これは私自身が何度も失敗してきました。
1996年4月のフェド杯グラフ戦。足に痛みがありましたが、試合中はアドレナリンが出ていてプレーできました。グラフから勝利を挙げましたが、翌日、私は歩けませんでした。結果的に6月のウインブルドンまでテープを必要とするままでした。
何か違和感を感じた時の見極める力が必要です。プレーをしたい気持ちを抑えることが最短で最良な選択になることがあるのかどうかです。その判断を誤ってしまうと回復が遅れてしまうことになります。小さな痛みはある中で戦うことは多くあるので、その痛みの種類がどういうものなのかの判断が難しいことも事実です。
選手は異変を受け入れなくてはいけません。ただ、それが難しいんです。身体の異変に気付いても、それに蓋をしてしまうんです。調子が良い時こそケガをしやすいので、認めたくないんですよね。周りの人が、いかに今休むことが故障から最短で復活できる方法なのかということを説明して、理解させるしか方法はないと思います。
私もセカンドキャリアでヒザを故障するまで、関節の仕組みについて考えることがありませんでした。正しい動きをしないと、炎症が起きるため、機能的に正しい動かし方をして力を発揮させることが大事だということを理解していなかったんです。関節内は見えませんから、わかりづらいこともあります。身体の仕組みを知ることも、自分の身体と向き合い、痛みに対処する上でも、大切なことです。
文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン
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しかし当然ながら、理想は痛みがない状態でプレーできることです。私のセカンドキャリアは、ケガが付きまといました。何度もケガをし、何度も決断に失敗しました。
大きな故障はヒザでした。試合後に腫れていることに気付き、その時には水が溜まっていたんです。冷静に振り返ると、数年に1度の頻度で「ヒザがぼてっとしているな」と感じたことが2、3回ありました。翌日には引いている程度の違和感でしたが、それがサインだったんです。異変が起き始めており、その時にMRIを取っていれば、簡単な対処法ですんでいたかもしれません。
身体のサインを見逃さずに、何かあったらすぐにMRIを撮ることです。画像は嘘をつきません。画像を撮るには、予約して診断してもらい、練習の時間もずらして…と煩わしいことがあります。しかし、それをしておいた方が、結果的に大ごとになることを回避できたり、回復が早いということにつながりやすくなります。
何も問題がなければ、心配材料がなくなり安心できます。トレーナーも他の要因を判断しやすくなりますし、わからないままでは練習をセーブしたりと無駄な時間になってしまうこともあります。
どんな痛みの時に行動に移すべきなのか、最初はわからないかもしれません。肉離れの前兆なのか、強度の筋肉痛なのかの区別は難しいものがあります。経験の浅いジュニアならなおさらです。それでも異変を感じたらMRIは撮ることを勧めます。特に関節内の痛みの場合は、絶対に撮るようにしましょう。
ケガの症状が、緊急事態ではないけれど続けると悪化するという場合、選手は休みたくありません。しかし、思い切って休むべきです。無理して試合をすると、結局一番長引きます。これは私自身が何度も失敗してきました。
1996年4月のフェド杯グラフ戦。足に痛みがありましたが、試合中はアドレナリンが出ていてプレーできました。グラフから勝利を挙げましたが、翌日、私は歩けませんでした。結果的に6月のウインブルドンまでテープを必要とするままでした。
何か違和感を感じた時の見極める力が必要です。プレーをしたい気持ちを抑えることが最短で最良な選択になることがあるのかどうかです。その判断を誤ってしまうと回復が遅れてしまうことになります。小さな痛みはある中で戦うことは多くあるので、その痛みの種類がどういうものなのかの判断が難しいことも事実です。
選手は異変を受け入れなくてはいけません。ただ、それが難しいんです。身体の異変に気付いても、それに蓋をしてしまうんです。調子が良い時こそケガをしやすいので、認めたくないんですよね。周りの人が、いかに今休むことが故障から最短で復活できる方法なのかということを説明して、理解させるしか方法はないと思います。
私もセカンドキャリアでヒザを故障するまで、関節の仕組みについて考えることがありませんでした。正しい動きをしないと、炎症が起きるため、機能的に正しい動かし方をして力を発揮させることが大事だということを理解していなかったんです。関節内は見えませんから、わかりづらいこともあります。身体の仕組みを知ることも、自分の身体と向き合い、痛みに対処する上でも、大切なことです。
文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン
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