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海外テニス

「女子テニス選手の賞金が高すぎる!」ドラキュラ伯爵の異名を持つ重鎮が言いたい放題

レネ・シュタウファー

2020.01.07

莫大な富と権力を手にした80歳の元選手に対して、果たして釘をさす勇者は出てくるのか。(C)GettyImages

莫大な富と権力を手にした80歳の元選手に対して、果たして釘をさす勇者は出てくるのか。(C)GettyImages

「女子選手に支払われる賞金って、高すぎないか?」

 なんとも過激で一方的な意見だが、実際にそう考えているのはマドリード・オープンの主催者でオーナーのイオン・ティリアクである。女子選手の賞金額は、観客動員数、スポンサー料、テレビ放映権料を考慮すると、「どうしても高いものに感じる」というわけだ。

「マドリード・オープンでの女子選手は、男子並みの高額賞金を受け取っている。だが女子部門の収入は全体の25%だ。だから男子選手が私に『いったいいつまで女子選手に俺たちのマネーを払い続けるのか?』と聞いてくるのさ」

 昨年5月に80歳を迎えたティリアクは、テニス界でもっとも騒がしく、そしてもっとも攻撃的な人物として知られている。現役時代は1968年に世界ランキング8位を記録し、名手イリー・ナスターゼと組んだダブルスでは長年「ルーマニアの恐るべき2人」として世界ツアーを席巻。70年の全仏オープンのダブルスで優勝、デビスカップでは3度も決勝戦に進んだ経歴を誇る。
 
 しかし、ティリアクが大成功を収めたのは引退後だ。辣腕マネジャーとなりギレルモ・ビラス、アンリ・ルコント、ボリス・ベッカー、マラット・サフィンといった一流選手を指導。また、大会コーディネーターとして八面六臂の活躍。さらにアイスホッケーではルーマニア代表に関わり、卓球でも一流の腕前を披露している。

 狩猟が趣味の彼は故郷の地名に掛けて、『ブラショフのブルドーザー』の異名を持ち、稀代の商才を発揮して銀行、保険会社、自動車販売会社、航空会社などを次々と設立。ルーマニア随一の億万長者へと登りつめたのだ。

 そんなティリアクは、大会賞金額の男女平等に関して、「政治的配慮が働いているため」と言う。たしかにグランドスラムでの女子選手が「もらい過ぎ」と指摘する声も一部にはある。だが表立ってその点を発言しようとする者はいない。

 仮にティリアクのインタビューがアメリカのメディアで発表されていたら、どうなっていたか。間違いなく彼は激しく糾弾され、コメントの訂正と謝罪を求められていたに違いない。
 
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