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【伊達公子】強豪国のテニスの特徴。選手が育つ国、ユニークな代表、最も勢いがある国は?<SMASH>

伊達公子

2024.08.02

チェコについて「器用な選手が多い」と言う伊達公子さん。写真:THE DIGEST写真部

 現在、全仏オープンの会場で「パリ五輪テニス競技」が行なわれています。テニスは個人スポーツですが、五輪の時は国を代表して戦う気持ちが強くなる選手が多いでしょう。今回は、テニスにおいて国ごとの特徴や印象について書きたいと思います。

 選手が育っていて、国のフェデレーションの力を感じるのはチェコとアメリカです。チェコには強い民間クラブが数個あり、活躍している選手はほとんどそこから育ってきています。ナショナルの監督やコーチは常にグランドスラムやツアー大会に来ており、民間クラブとフェデレーションの連携がうまくいっている印象です。

 チェコの選手は淡々とプレーするタイプが多いですね。しっかりサポートされている感じはありますが、どことなく「個」という感じです。全仏オープンとウインブルドンに優勝したバルボラ・クレイチコワ(世界ランク10位)や全仏オープンで準優勝しウインブルドンで優勝した経験があるマルケタ・ボンドルソワ(同18位)など、器用な選手が多いのも特長です。

 アメリカも選手を多く輩出していますが、プレーはハードコート向きです。コートを広く使えるタイプではなく、パンパンパンとリズムよくポイントを取っていきたい選手が多いです。お祭り好きな国民性で観客が盛り上がれば実力以上の力を発揮できます。ヨーロッパなど盛り上げてくれる観客がいない場合は、本人の勢いでどこまで突き進めるかになってきます。

 国の代表としてユニークなのはカザフスタンです。エレーナ・ルバキナ(同4位)、ユリア・プチンツェワ(同29位)ともにロシア出身ですが、カザフスタンがテニスにおけるあらゆるサポートが受けられることで国籍を変えました。彼女たちはロシアのパスポートを保持した状態で、カザフスタンを拠点に活動しています。国籍を変更するという感覚が島国の日本とは違うのかもしれません。
 
 テニスで今、最も熱い国はイタリアでしょう。全仏オープンとウインブルドンで決勝に進出したジャスミン・パオリーニ(同5位)に、男子1位のヤニック・シナー、ウインブルドンでベスト4入りしたロレンツォ・ムゼッティ(同17位)がいます。自国に大会を多く作っていますし、国を挙げてテニスを強化しているのがわかります。グランドスラム開催国ではないので、資金面をどうしているのか、改革者が誰なのかは気になるところです。

 最後に、クレーと言えばスペインの印象があります。スペイン人選手にとっては、小さい時から慣れ親しんでいるサーフェスです。クレーではラリーが長く続きやすく、疲れて当然です。しかし、そう思っているのはクレーに慣れていない私たちだけで、「スペイン人選手は疲れていないのでは?」と思えるほど、疲れている雰囲気がありません(笑)。

 おそらく、力の抜きどころを心得ているのでしょう。私たちは常に一生懸命、精一杯プレーするしかできないので、彼らよりも疲労するのだと思います(笑)。今は男子ナンバー1のカルロス・アルカラスもいますし、その勢い引っ張られて今後もスペインでは選手が育っていくのではないでしょうか。
※ランキングは7月22日付け

文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン

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