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海外テニス

【伊達公子】グランドスラム2週目を戦う上位選手はピーキングを考えている<SMASH>

伊達公子

2024.06.07

グランドスラム1週目の試合では「捨てていいところは捨てることです」と言う伊達公子さん。写真:THE DIGEST写真部

グランドスラム1週目の試合では「捨てていいところは捨てることです」と言う伊達公子さん。写真:THE DIGEST写真部

 テニスのグランドスラム(四大大会)「全仏オープン」もいよいよ終盤を迎えました。2週目を戦う選手の多くはシード選手であることが多いです。彼らは2週間を戦う準備をして大会に臨んでいます。今回は上位選手のピーキング(コンディションを最高の状態に持っていくこと)について紹介します。

 普段のツアー大会は開催期間が1週間なので、グランドスラムのような2週間を戦い抜くためにはペース配分を考えなくてはいけません。いつも通りに戦っていると、まず気持ちが続かなくなります。2週目は4回戦以降なので、本来であれば1週目よりも更に気持ちを上げる必要があります。しかし、ペース配分を考えていないと、このタイミングで上がってこないのです。

 2週目の必要な時にグイッと上げるためには、1週目で抑え気味にしておくことです。ドロー(組合せ)によっては3回戦でタフな相手と当たることもあるので、私の場合は3回戦で1度上げて、その後に落としてもう1度上げるというイメージを作っていました。

 ファーストキャリアの時は、1週目を抑え気味にするために、気持ちも体力も6、7割で戦う感じでいました。無理せず自分のベースのプレーを保つ感じです。自分が上げなくても、こちらがシードになると対戦相手が勝手にミスをしてくれたり、自滅してくれることが多かったですね。当時はシードが16本だったので、メンタル的に相手が気負っていたのかもしれません。

 また、ドローの先の方も見ておいて、「この選手が勝ち上がってきたら、こういうテニスをしないといけない」ということを考えておきます。例えば、ドロップショットを多く使った方が良い相手の場合は、前のラウンドからドロップショットを打つ回数を多めにするなどしていました。
 
 フィジカルを保つのも大変です。一番大事な時に良いコンディションで戦えるということが重要ですが、大会が進むにつれて負荷がかかるのは避けようがありません。そのため、メンテナンスは必須で、大会中にケアしながら回復させていく必要があります。

 1週目は接戦にならず、無駄なゲームを重ねないことが理想です。たとえファイナルセットになったとしても、走り過ぎることがないようにしたいものです。私は無駄な体力を使わないために、無駄にボールを追いかけないようにしていました。捨てていいところは捨てることです。

 大会をトータルで考えます。1ポイントだけでなく、試合全体。1試合だけでなく大会の終わりまでを考えるのです。その瞬間が良くても、次の試合でテーピングを撒いて動けないようでは意味がありません。2週目を経験することで、全体を見て考えられるようになったと思います。ただし、1ポイントを必死で追いかけることで調子が戻るという場合もあるので、その辺は使い分けです。

 上位選手のグランドスラムの戦い方を紹介しましたが、シードが付いたからといって2週目に残れるとも限りません。私は1994年の全仏オープンで初めて第16シードが付いて喜んだのも束の間、ドローが出たら1回戦が17位のクレーコーター、アマンダ・クッツアーでした。1回戦負けして「もう2度と赤土の大会には出ない!」と思いましたね(笑)。

 上位選手だから簡単に1週目を勝ち上がれるとは言いませんが、彼らは大会2週間を戦い抜くことを考えてプレーしています。今回の全仏オープンでも、決勝に残った選手の2週間の戦いぶりを振り返ってみると、彼らの工夫の跡がわかるかもしれません。

文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン

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