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海外テニス

一進一退の死闘を制した柴原瑛菜!全米OPシングルス本戦初勝利を果たし「このチャンスをモノにした自分を誇りに思う」<SMASH>

内田暁

2024.08.29

元20位サビルとの3時間を超えの熱戦を制した柴原。次戦は世界女王のシフィオンテクに挑む。(C)Getty Images

元20位サビルとの3時間を超えの熱戦を制した柴原。次戦は世界女王のシフィオンテクに挑む。(C)Getty Images

 柴原瑛菜(世界単217位/複39位)が、テニス四大大会・シングルス本戦のデビューを戦う「全米オープン」の14番コートは、いつの間にか、幾重もの人垣に囲まれていた。

 一進一退の死闘は3時間を超え、ファイナルセットの終盤に至っても、勝負の行方が見えない。その激しい攻防に一喜一憂する観客の声援が、さらなる観客を呼び寄せたのだろう。

 陣営から「ダーシャ」の愛称で呼ばれる対戦相手のダリア・サビル(オーストラリア/95位)は、長くテニスを見て来た人にとっては、婚前の「ガブリロワ」の方が馴染があるだろう。最高ランキングは20位の30歳。度重なるケガをも乗り越え、身長166センチの小柄な身体で精力的にコートを駆ける、不屈のファイターである。

 その実力者から柴原は、限られたチャンスを生かして第1セットを奪取。

 第2セットは逆に、柴原が見せた小さな綻びを見逃さず、試合巧者のサビルが取り返した。
 
 迎えた運命のファイナルセットも、序盤でブレークを奪ったのは、第2セットからの流れに乗るサビル。だが柴原は、直後のゲームを奪い返し食らいついた。

 柴原が時速180キロ超えのサービスとフォアハンドの強打で攻めれば、サビルはスライスやループを用いてミスを誘う。

 その激しい鍔迫り合いのなか、ゲームカウント5-5の第11ゲームで柴原は、相手の6本のゲームポイントを凌ぎ、2本のブレークチャンスを得た。だが8度のデュースの末に、最終的にゲームは相手の手に……。

「気持ち的にすごく難しかった」

 後に柴原は、その事実を素直に認める。隠しきれない落胆は、直後のゲームの最初のポイントで、ダブルフォールトとして表面化した。だがここで柴原は、「自分のサーブを信じた」という。続くポイントを豪快なフォアで決めると、そこからセンターへのサービスエース、そして連続サービスウイナーでゲームキープ。

「良いサーブでフリーポイントが続き、すぐホールドできたことが、(10ポイント・マッチ)タイブレークにつながった。相手のターニングポイントになったかもしれないけれど、そこで自分の流れを戻せたことが大きかった」
 
 幾度も流れが入れ替わった3時間超えの激闘の、ここが最後のターニングポイントだったろう。勢いをつけ駆け込んだ10ポイントマッチタイブレークでは、柴原は1-2からの5ポイント連取で、しぶとい相手を突き放した。

 そうして迎えた、マッチポイント――。相手のセカンドサービスはネットをかすめ、そのまま、サイドラインを割っていく。

 その行方を見届けた柴原は、崩れ落ちるように両ヒザを折り、両手を付き、そして顔をコートへとうずめる。

「I am proud of myself for taking this chance――このチャンスをモノにした自分を誇りに思う――」

 それがこの時、彼女の胸を満たした思いだった。

 今大会、最後の1枠で初の四大大会シングルス予選に滑り込んだ柴原は、そのチャンスをもモノにし本戦の切符を勝ち取ると、初戦で3時間16分の死闘を制した。

 その勝利の先、2回戦で彼女を待ち受けるのは、2年前の全米オープン優勝者にして、世界1位のイガ・シフィオンテク(ポーランド)。

「世界一の選手なので、絶対にタフなマッチになる。でもその中でどのくらい自分のテニスができるのか……良いプレーをみんなに見せたいなって!」

 胸の高鳴りに呼応して、自ずと笑顔が爆ぜる。

 14番コートに多くの人を引き寄せた柴原のプレーは、世界最大のテニス専門コート、アーサーアシュスタジアムに舞台を移し、より多くの人々の前で披露される。

現地取材・文●内田暁

【動画】柴原VSサビルの「全米オープン」1回戦ハイライト

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