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16歳の園部八奏、スケールの大きなテニスで「全米オープンジュニア」決勝進出!満足はしていないが「やっぱりうれしい」<SMASH>

内田暁

2024.09.06

174センチの長身を生かしたダイナミックなプレーで全米ジュニア優勝まであと1勝と迫った園部八奏。写真=内田暁

「今回はシードもついている。勝ちたい気持ちは、いつもより強いです」

 視線を真っすぐ前に向け、園部八奏(そのべわかな)が言った。全米オープンジュニアの準々決勝。同じアカデミーを拠点とし、練習も共にする盟友のテオドラ・コストビッチ(セルビア)に、6-3、6-4で勝利した後のことである。

 2年半前――、園部は盛田正明テニスファンドの支援を受け、米国フロリダ州のIMGアカデミーを拠点とした。グランドスラム(四大大会)デビューは、昨年1月末の全豪オープン。15歳の誕生日を迎えたばかりの頃だった。
 
 園部がグランドスラムジュニアデビューを果たした時には、IMGアカデミーの先輩でもある石井さやかや小池愛菜、齋藤咲良らが既に上位にいた。昨年の全米ジュニアでは木下晴結とダブルスを組み、ベスト4に進出している。

 身長は174センチと日本勢内でトップクラスだが、年齢では一番下。先輩たちの活躍の傘の下で、長い手足を伸び伸び広げ、左腕を振り抜きボールを打ち抜いてきた。その大きなスケール感は、強打自慢の石井さやかをして、「恐れ知らずで、羨ましい」と目を細めさせるほど。本人も石井の言葉を嬉しそうに聞きながら、一層、伸びやかにラケットを振っていた。

 その石井も今年で19歳を迎え、今はプロ大会を転戦中。小池や齋藤、木下らも一般大会に軸足を移し、ジュニアは実質卒業した。今回の全米ジュニアには、16歳の沢代榎音ら、初めてグランドスラムを経験する選手もいる。経験では園部が、一気に最上位に繰り上がった。
 
「いつも一番年下で、みんなにくっついていた感じだったので、ちょっと寂しいですね……」

 先輩たちがいた時を、園部は小さく笑って懐かしむ。ただ、新たな立場と環境が、彼女に自覚や目的意識を植え付けてもいるようだ。

 現在ジュニアランキング10位の彼女は、今大会には第7シードとして出場。未踏だったグランドスラムジュニアベスト8、そしてそのさらに先を目指してきた。

「勝ちたいと思ったら、緊張もする」と園部は言う。「ただ、そこで勝ち切ってきたのは、大きい」と、自らの言葉にうなずいた。

 その重圧を一層感じたのが、準々決勝。「最近多く勝っていて、自信を持っていることもわかっていた」という相手に、「プレーはあまり良くない」ながらも、勝ちをもぎ取る。試合終盤、消極的になりかかった時は、「何も考えないようにしようと、考えた」という。そんな禅問答的セルフコントロールで、3本目のマッチポイントをモノにした。

 初めて勝ち上がった、グランドスラムジュニアのベスト4。その地位に満足はしていないが、同時に「やっぱりうれしい。1回戦に勝っただけでも、けっこううれしい」と笑う。

 そんな彼女の今大会の目標は、「一球ずつ、質の高いショットを打つこと」

 大きな勝利を視界の先に捕らえつつ、目の前のボールを全力で打ち抜く。
 
現地取材・文●内田暁

※園部は現地6日に行なわれた準決勝で第8シードのシュウ・ミン(イギリス)と対戦して6-4、6-4で勝利。見事決勝進出を果たしている。

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