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国内テニス

「子どもの頃からテニス力に加え人間力も養う必要がある」安藤スポーツ・食文化振興財団による将来を見据えた特別な取り組み<SMASH>

内田暁

2024.07.14

兵庫のビーンズドームで開催された「安藤財団グローバルチャレンジJr.テニス」に参加し子どもたちと講師陣らスタッフ。写真提供:日本テニス協会

兵庫のビーンズドームで開催された「安藤財団グローバルチャレンジJr.テニス」に参加し子どもたちと講師陣らスタッフ。写真提供:日本テニス協会

 ATPチャレンジャーや、デビスカップ/ビリージーンキングカップなどの会場にもなっているビーンズドーム(兵庫県三木市)に、軽やかな打球音と、子どもたちの快活な声が響き渡っていた。

 その賑わいの合間には、「ちゃんとボール見てね」「最後までボールを追う!」など、カツを入れるかのような声も飛ぶ。

 6月21日から23日にかけてこの地で行なわれていたのは、「安藤財団グローバルチャレンジJr.テニス」。各都道府県から選ばれた満11歳(小学5年生)の選手たちが、一堂に会し練習や座学も行なう、いわば育成合宿である。

 次代の担い手を育成するこのプロジェクトは、安藤スポーツ・食文化振興財団の支援のもと、日本テニス協会(JTA)が主催し昨年発足した。47都道府県テニス協会の推薦を受けた男女各1名ずつを招待し、計94名の選手を3回に振り分けて、それぞれ3日間の合宿を行なう。加えて昨年4月の大阪市合宿には、香港から男女各3選手を招待した。

 キャンプの内容は、ジュニア指導の経験も豊富なコーチ陣に加え、元トップ選手たちによる技術指導が主体。加えて、栄養学やトレーニング方法、さらにはメディア対応やテニス史を学ぶ座学やセミナーも開かれるのが特徴だ。

 安藤スポーツ・食文化振興財団が支援する競技は、テニス以外にも陸上やバスケットボールなどがある。ただ、このような合宿形式のプロジェクトに携わるのは、テニスだけだと担当者が明かした。
 
 日清食品の創業者である安藤百福氏の財団設立の歴史は、1983年まで遡る。高度経済成長が終焉を迎えた1970年台後半から1980年代は、少年刑法犯が増加し「非行少年・少女」が社会問題化した時代。その状況に心を痛めた安藤百福氏は、「ありあまるエネルギーをスポーツに向け、心身ともに健全になって欲しい」との願いから、「食とスポーツは健康を支える両輪である」との理念を掲げ、前身である日清スポーツ財団を立ち上げた。

 設立当初から、今も変わらず支援し続けているのが、陸上競技である。「走ることは、全てのスポーツの基本。小学生のうちから、正しい走法を学ばせたい」という日本陸上競技連盟の願いもあり、全国小学生陸上競技交流大会の支援を開始。その後、2022年からは日本バスケットボール協会とも連携し、18歳以下のリーグ戦も創設した。

 では、なぜテニスは競技大会ではなく、前述したような若手発掘・育成システムなのか? 安藤スポーツ・食文化振興財団の担当者が説明する。


「世界で戦うには、子どもの頃からテニス力に加え人間力も養う必要がある競技。技術、フィジカルだけではなく、スポーツマンシップや相手へのリスペクトなど人格形成も重視したチャンピオン教育を行ないたい。そのためにはトップレベルの選手が集まり切磋琢磨する合宿がベストと協会から伺い、『我々の理念と一緒だ』と思ったので、支援をさせて頂くことになった次第です」

 日本テニス協会が兼ねてより願っていたビジョンと、安藤スポーツ・食文化振興財団の理念が交錯した地点に立ちあがったのが、合宿形式の育成・強化策だった。
 
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