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海外テニス

ジャパンオープン優勝は20歳のフィス!3時間4分の激闘の末アンベールとのフランス勢対決を制す<SMASH>

内田暁

2024.10.02

今大会初出場のフィスが優勝。決勝では相手にマッチポイントを握られたところから逆転勝利でツアー3勝目を飾った。写真:滝川敏之

今大会初出場のフィスが優勝。決勝では相手にマッチポイントを握られたところから逆転勝利でツアー3勝目を飾った。写真:滝川敏之

 男子テニスのATPツアーとしては、2020年1月のオークランド大会以来。ATP500のグレードに限れば、史上2度目の“フランス人決勝戦”が実現した「木下グループジャパンオープン2024」。世界19位のウーゴ・アンベールとの頂上決戦を制したのは、24位のアルトゥール・フィス。20歳3カ月での戴冠は、大会史上2番目の年少者記録でもあった。

 四大大会の一つである「全仏オープン」を有し、テニス発祥の地とも呼ばれるフランスの、テニス大国としての歴史は長く誇りは高い。ゆえにファンや関係者からの選手への要望は高く、向けられる視線や声は時に辛辣だ。

「フランスの選手は、良い試合をしたら満足してしまい、勝利へのハングリーさが足りない」

 フランスメディアは、地元選手について度々そのような評価を下す。2023年の全仏オープンでは、男子シングルスで3回戦以上に進んだ選手はゼロで、危機感は一層の高まりを見せていた。

 かつて“四銃士”と呼ばれた4人のスター選手たちも、ジョーウィルフリード・ツォンガとジル・シモンは引退し、リシャール・ガスケは来年1月での引退を表明。残るガエル・モンフィスも、Xデーはそう遠くないだろう。そのような時勢の中で、母国の期待を集めるのが今大会の決勝を戦う二人。取り分け、若いフィスだろう。

「僕にとって、6歳年長のウーゴは兄のような存在。オンコートでもオフコートでも、いつも助けてもらっている」と、フィスはアンベールを評する。両者は過去に4度対戦し、アンベールの4勝。しかもツアー6勝のアンベールは、決勝で負けたことはない。速めのハードコートは、サウスポーのビッグサーバーが得手とするサーフェスでもある。

 加えて今大会のフィスは、準決勝のホルガー・ルネ戦も含め、連日、深夜に及ぶフルセットの死闘を制してきた。それら多くの数字や状況は、26歳の優位を示していただろう。
 
 果たして第1セットから、フィスはポイント間にもヒザに手をつけ肩で息するなど、疲労の色を隠しきれない。第1セットを7-5で取ったアンベールが、第2セットも優位に進めていく。

 それでも「コートに入り、プレーして様子を見ようと思っていたら、感触が良かった」というフィスは、コートをエネルギッシュに駆け、攻守のバランスを取りつつ食らいつく。第2セットのタイブレークではマッチポイントまで追い詰められるも、目の覚めるようなバックのパッシングショットで切り抜けた。

 逆転で第2セットをもぎ取り、二人肩を並べるように駆け込んだファイナルセット。試合開始からちょうど3時間が経過した時、フィスが値千金のブレークをつかみ取った。最後は、センターに210キロ超えの2連続エース。観客の大歓声と同時にコートに大の字に倒れ込んだ時、電光掲示板には5-7、7-6(6)、6-3のスコアと共に、3時間4分の試合時間が表示された。

 通算3度目のツアー優勝を飾ったフィスは、表彰式でトロフィーを目にした時、「大きいな!」と驚いたという。セレモニー終盤では段取りがわからず、「いつトロフィーを持ち上げていいのか戸惑った」と、初々しく明かしもした。

 その銀のトロフィーを手に取った時、彼は刻まれた歴代優勝者の一覧に、ジョーウィルフリード・ツォンガの名を見つけた。

「彼が優勝していたことを知らなかった。この大会で優勝した2人目のフランス人選手になれて、すごく幸せな気分だった」

 矜持を込めて、フィスが言う。偉大なる母国の先輩からのバトンを、次代を担うスター候補が、有明コロシアムで受け取った。

取材・文●内田暁

【画像】シングルス決勝は20歳のフィスが親友対決を制し初優勝!|ジャパンオープン

【動画】フィス対アンベールの「ジャパンオープン」決勝ハイライト

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