テニスの日本チャンピオンを決める「三菱電機ビルソリューションズ 全日本テニス選手権99th」（10月４日～13日／東京・有明／ハードコート）は13日、男子シングルス決勝が行なわれ、第４シードの今村昌倫が第３シードの磯村志を7-6(6)、6-4で破って初優勝を飾った。

　磯村の打球がネットにかかり勝敗が決すると、安堵した今村は倒れ込むようにコートに大の字になった。第２セットの途中から今村の両足はケイレンを繰り返しながら限界に近づいていた。そうしたなかで訪れたワンチャンスをものにしたのであった。

　磯村に対して２戦２勝と戦績でリードする今村だが、全日本決勝の重圧によって立ち上がりから動きが硬くなる。それは磯村も同じだった。お互いが相手の出方を探るようなラリーが繰り返されるなか、今村がサービスブレークに成功すると、すかさず磯村がブレークバックで応酬。第８ゲームまで６度のブレークが繰り返される荒れた第１セットは、タイブレークにもつれ込むと今村が8-6で取り切った。

　今村は第２セットの第１ゲームでサービスをキープすると、第２ゲームでは激しい打ち合いのなかで３度目のブレークポイントをものにし、さらに第４ゲームもブレークに成功してスコアを4-0まで伸ばした。振られても必死に食らいつき、伸びのあるショットを繰り出す今村の姿からは勝利を予感させた。

　だが実際の状況は違っていた。「セカンドの3-0の辺りからふくらはぎのあたりがヤバいかなと思っていた」今村は、ポイントを重ねながらも徐々に肉体が悲鳴を上げていくのを感じていた。そしてスコア4-1となったところでたまらず、メディカルタイムを要請して治療を受ける。
  「最初は左足の前のモモがつってしまい、治療した後も、ちょくちょく回復するタイミングはありましたが、そうしていると別の所がつり出すという感じで…」。症状の悪化とともに今村は思うようにボールを捉えることができず、得意のストロークも手打ちに近い状態での返球を余儀なくされる場面が増える。

　磯村はその時の心情を「なかなか崩れなかった印象が強い中で（今村の足に問題が起きたことで）やっと（チャンスが）来たという気持ちがあった。それで『行けるのかな』ということが頭をよぎってしまいプレーが消極的になったのかと思う」と試合後に悔やんだ。

　スコア5-2から5-4と２ゲームを奪い返された今村は、「5-5に追いつかれてファイナルセットに持ち込まれたら厳しいなと感じていたので、チャンスがあれば5-4から6-4にして試合を締めたいと思っていた。そのタイミングでちょっとだけ身体の状態が良くなったので、無理をしてでもここを取りに行こうと思った」と明かす。

　運命の第10ゲーム、スコアで先行した今村は、残っていたパワーを振り絞るように打ち続け、磯村のサービスをブレーク。勝負の潮目を見逃さなかった今村が２時間11分にわたる激闘に終止符を打ったのである。

◆男子シングルス決勝の結果（10月13日）
○今村昌倫（JCRファーマ）[4] 7-6(6) 6-4 磯村志（やすいそ庭球部）[3]●
※カッコ内の数字はシード

取材・文●小松崎弘（スマッシュ編集部）

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