海外テニス

伊藤あおい、ツアー初参戦でベスト8入りの快進撃!変幻自在なテニスが「噛み合いさえすれば…」次戦も期待<SMASH>

内田暁

2024.10.17

伊藤あおいは予選勝ち上がりながら相手を惑わすマジカルなテニスを駆使して見事ベスト8進出を果たした(写真は2024年全日本選手権)。写真:田中研治(THE DIGEST 写真部)

 現在、大阪市靭テニスセンターで開催さている、女子テニスツアーの「木下グループ・ジャパンオープン」。10月16日にはシングルス2回戦他が行なわれた。

 日本勢では、予選を勝ち上がりWTAツアー本戦デビューとなった伊藤あおいが、1回戦で2020年全豪オープン優勝者のソフィア・ケニン(アメリカ/世界ランク158位)に勝利。2回戦では、今大会第8シードのエリザベッタ・コッチャレット(イタリア)に6-4、6-3で快勝し、準々決勝に歩みを進めた。

 今季の全仏オープンで4回戦進出も果たしている世界50位が、ラケットで地面を叩き、苛立ちの声を上げた。早いタイミングで返ってくる伊藤のストロークに、振り遅れる。かと思えば、滞空時間の長いロブを待ち切れないように、強打したボールがラインを越えていく。

 そんな相手の混乱や狼狽を見透かしたかのように、伊藤はフォアハンドのスライスをライン際にスルリと流すと、迷いなくネットにつめて、オープンコートにボレーを落とす。ブレークをされても、すかさずブレークバックし流れを引き戻すなど、試合運びもこの日は盤石。コートを伊藤あおいの色に染め、相手を自身の領域に引きずり込んだ。
 
「今日の相手は、パワーではなく組み立ててくるタイプだったので、相性的には良かった」

 試合後に、伊藤が笑みで振り返る。

「自分のテニスは特殊なので、噛み合いさえすれば勝てるのではと思いました」

 そう言うと彼女は、「噛み合いさえすれば」と繰り返した。

「特殊」と自認する伊藤のテニスは、幼少期から今も変わらぬ独自の感性と、父親の指導理念のケミカルの産物だと言える。

「伊達公子さんと、シェイ・スーウェイを足したテニス」とは、数年前から伊藤本人が公言してきたテニスの指標。ただ実際には、「伊達さんもスーウェイさんも、ほとんどプレーは見たことがないんです」と首をすくめた。そんな伊藤のテニスの設計図を描いたのは、父でコーチの時義氏。

「だって伊達さんが、小柄でも世界で勝てるテニスを示してくれた。それを見習わない手はないじゃないですか」

 父はそう言い、カラリと笑った。
 
NEXT
PAGE
相手のランキングは伊藤にとってあまり関係なかった