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海外テニス

伊藤あおい、ツアー初参戦でベスト8入りの快進撃!変幻自在なテニスが「噛み合いさえすれば…」次戦も期待<SMASH>

内田暁

2024.10.17

パワーでは勝てないと悟った伊藤が編み出した省エネテニスを武器に初参戦のWTAツアー本戦で快進撃が続いている(写真は2024年全日本選手権)。写真:田中研治(THE DIGEST 写真部)

パワーでは勝てないと悟った伊藤が編み出した省エネテニスを武器に初参戦のWTAツアー本戦で快進撃が続いている(写真は2024年全日本選手権)。写真:田中研治(THE DIGEST 写真部)

 その父の教えに磨きをかけたのは、なんといっても、伊藤本人の感性と知性だろう。小学生の頃から大人に混じって試合をしてきた伊藤は、「パワーでは勝てないなかで、勝ち上がるために省エネを考えた」という。

「以前は正統派というか、ライジングで返して前に出る感じだったんですが、それでは限界を感じまして。高校生くらいから試行錯誤して、こうなりました」

 草試合を次々に重ねていく中では、相手の情報はコート上で収集し、その場で分析し策を実践していくしかない。その姿勢は今もそして今大会でも、基本は変わっていないという。

「最初にとりあえず自分が得意なパターンをやってみて、それが全然相手に効かなかったりしたら、色々と変えて、一番ポイントを取れるやつを探して……という感じです」

 技とヒラメキで組み立てる即興テニスは、どこか前衛芸術的な匂いも放つ。そんな彼女が自分のテニスを貫き通せた背景には、幼少期に通ったテニスクラブの、コーチとの相性もあるだろう。彼女が籍を置いた名古屋のチェリーTCは、全豪オープンジュニア優勝者の坂本怜も輩出した名物クラブ。そのオーナーコーチの千頭氏は、以前に伊藤について、次のような思い出を語ってくれた。
 
「練習でちゃんと走らない時に、『そんなんやったら出てけ!』と叱ったら、たいがいの子は『ごめんなさい』ってなりますよ。でもあの子は、本当にコートから出ていって、クラブハウスで漫画読んでましたからね」

 そう語るコーチの表情は、明らかに楽しそうだった。

 初のWTAツアー本戦でベスト8に進んだ伊藤の、次の相手は、ラッキールーザーのエバ・リス(ドイツ/同118位)。

 50位の選手に勝ったなら、次も……と前のめりになる報道陣を軽くいなすように、伊藤は「ラッキールーザーと言っても、私よりランキングは100位近く上。それこそ、6ゲーム取れればと思っています」と笑う。

 確かに今の伊藤にとって、対戦相手のランキングは、さしたる意味を持たないだろう。

「噛み合いさえすれば……」

 噛みしめるように放ったこの言葉の真価が、またコート上で披露される。

取材・文●内田暁

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