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海外テニス

ドーピング問題で提訴された世界1位シナーが出場停止3カ月でWADAと示談。5月には復帰の見込み<SMASH>

内田暁

2025.02.16

急転直下で出場停止3カ月の示談が成立したシナー(左)。出場予定だったカタール・オープンでは予定を遅らせてドローミーティングが行なわれた(右上・右下)。写真:(C)Getty Images、内田暁

急転直下で出場停止3カ月の示談が成立したシナー(左)。出場予定だったカタール・オープンでは予定を遅らせてドローミーティングが行なわれた(右上・右下)。写真:(C)Getty Images、内田暁

 男子テニスツアー「カタール・オープン」(ATP500)開幕2日前の2月15日。この日の正午(現地時間)には、本戦シングルスのドローミーティングが開かれる予定だった。さらに14時半からは、第1シードのヤニック・シナーと、第2シードのカルロス・アルカラスの会見も予定されていた。

 ところが正午が近くなっても、ドローミーティングの準備が進む気配がない。ATPコミュニケーターに尋ねると、「14時からに延期になった」と言う。では14時半から予定されている会見はどうなるかと問うと、「わからない」との返事だった。

 その後も、数人のATPメディアコミュニケーターたちが慌ただしくプレスルームを行き来する。混沌の理由は、それから20分ほどして明らかになった。世界アンチドーピング機構(WADA)が、「ヤニック・シナーとの示談に合意」とのニュースをリリースしたのだ。

 シナーは昨年3月のドーピングテストにて、禁止薬物であるクロステボルが、2度にわたり検出された。ただ直後にシナー側は、「薬物はトレーナーが自分の指を切った際に用いた止血用スプレー薬に含まれていたもので、トレーナーがシナーにマッサージをほどこした際に体内に入った」と主張。検出量が微量だったこともあり、国際テニス・インテグリティ機関(ITIA)も、当初はシナーに出場停止処分等を課すことはなかった。

 この判決に待ったをかけたのが、WADAである。WADAは、「シナーには1~2年の出場停止処分が妥当」とし、昨年9月にスポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴。その審理が、今年4月16~17日に行なわれることが1月に決まったばかりだった。
 
 この審理時期が発表された当初から、シナーへの処分は慣例的にも、3カ月の出場停止が妥当と見られていた。それは、5月末開幕の全仏オープンと、続くウインブルドンは出られないことを意味する。それだけにCASが下す判決には、多くの注目が集まっていた。

 その流れの中で発表されたのが、“示談”である。WADAはこの度の公式リリースで、「WADAは提訴はしたものの、この特定のケースに関しては、その公平性と適切さに鑑み、アンチドーピングコードに則り示談に応じる用意があった」と表記する。

「シナー本人に不正を働く意図はなく、検出されたクロステボルの量も、パフォーマンスに影響を与えるものではない。シナーの周囲の人員による過失であるという本人の説明には、合理性がある」

 そのようにもWADAは説明するが、同時に「アスリートは、周囲の人員の過失に対し責任を負う必要がある」とし、「状況から考えると、3カ月間の出場停止が妥当」と結んだ。

 今回、シナーはカタール・オープン開幕の1週間近く前から現地入りし、2月11日以降は連日、会場で練習していた。それだけに今回の発表は、取材に訪れているイタリア人記者たちにとっても、青天の霹靂だったようだ。

 なおシナーに課された正確な出場停止期間は、2025年2月9日から2025年5月4日まで。3カ月より短いのは、暫定的停止処分として服していた4日間が控除されるからだという。これによりシナーの復帰戦は、5月7日に母国で開幕する、ATPマスターズ1000のイタリア国際が有力だ。

現地取材・文●内田暁

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