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海外テニス

【雑草プロの世界転戦記30】どこにどんなボールを打つかが重要! フォームにこだわらないヨーロッパの指導法<SMASH>

市川誠一郎

2025.03.29

狙った所にいいボールが入っていればOK、というのがヨーロッパのテニス指導。だからこそ個性的な選手がどんどん出てくる。写真提供:市川誠一郎

狙った所にいいボールが入っていればOK、というのがヨーロッパのテニス指導。だからこそ個性的な選手がどんどん出てくる。写真提供:市川誠一郎

 25歳でテニスを始め、32歳でプロになった市川誠一郎選手は、夢を追って海外のITF(国際テニス連盟)大会に挑み続ける。雑草プレーヤーが知られざる下部ツアーの実情や、ヨーロッパのテニス環境を綴る転戦記。

―――◆―――◆―――

 ヨーロッパと日本の指導法はいったいどこが違うのか? 前回は、正しい形にこだわる日本に対して、ヨーロッパでは結果重視だという話をしました。今回はその続きです。

 ヨーロッパの指導は、「フォームをこうしなさい」ではなく、「力強く高い弾道のボールをクロス深くに打ちなさい!」といった指示をします。そのボールが打てていればOK。浅ければ「もっと高く!」というように、どのようなフォームで打つかについては細かく言わないことがほとんどです。

 原点になっているのは、「どこにどのようなボールを打つか」ということなのです。あくまでその本質を脱さない前提で、最低限のシンプルな技術的指導をしていきます。

 ストロークの指導で一番の基礎として教えるのは、後ろから前にスイングすること。のけぞらず、後ろから前へ重心移動し、スイング方向も大きく前へ――ということです。「前へ」というのがキーワードになっています。

 そして、下から上にしっかりスピンをかけること。フィニッシュまで振り切ること、肩を入れることなど、大概がこのような極めてシンプルでオーソドックスな内容です。
 
 これがおおむねできていれば、テイクバックの仕方やスイングのフォームなどは、かなり個人の個性に委ねられます。どのような打ち方でも、自分が一番打ちやすい打ち方で、狙った所に飛ばしていればそれでいいのです。

 フットワークも、足をこうついて、どのスタンスで、カカトやつま先バランスで、最初の一歩はこう出して、身体を前傾し...等々、日本で指摘されるような細かいことは言われません。単純にスプリットステップして速くボールの所に行くように...というだけです。

 最低限の原則を押さえていればフォームはOKというシンプルな指導が、多くの個性的な選手を生み出しています。実際、球出し練習ではできても、実際のプレー中にそこまで細かいことをいくつも気にしてプレーすることは非常に難しく、混乱や全体の硬直の原因になります。

 一番重要なポイントに絞ったシンプルな指導は、運動では非常に重要と言えます。

文●市川誠一郎

〈PROFILE〉
1984年生まれ。開成高、東大を卒業後ゼロからテニスを始め、32歳でプロ活動開始。36歳からヨーロッパに移り、各地を放浪しながらITFツアーに挑んでいる。2023年5月、初のATPポイントをダブルスで獲得。Amebaトップブロガー「夢中に生きる」配信中。ケイズハウス/HCA法律事務所所属。

【画像】雑草プロの世界転戦記・ヨーロッパのテニスアカデミーでの日常風景

【画像】雑草プロの世界転戦記・ヨーロッパ各国の下部ツアーの風景

【画像】雑草プロの世界転戦記・ヨーロッパのジュニア大会情景集
 

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