最後は、意外なまでにワンサイドな展開となった。
女子テニスツアーの四大大会に次ぐWTA1000カテゴリーの「マイアミ・オープン」ダブルス準決勝。加藤未唯/クリスティーナ・ブクサ(日本/スペイン)組が、第1シードのテイラー・タウンゼント/カテリナ・シニアコワ(アメリカ/チェコ)組に2-6、7-5、そして10ポイントマッチタイブレークでは10-2と圧勝し、決勝進出を決めた。
1月の「全豪オープン」(四大大会)で、レナタ・サラスア(メキシコ)と組みベスト8に進出した加藤は、その後ツアーでは、ブクサと組んで出場。「ストロークがしっかりしている」パートナーとは、相性も良かったはず。実際に両者のプレーは、悪くない。ところがツアーでは、5大会連続で初戦敗退を喫した。
「何かを変えなくては」
そう思った加藤は、今大会が始まる直前に「サイドを入れ替えてみない?」とパートナーに提案。ブクサも、「私はどっちでもいけるから、あなたの好きなようにしよう」と快く受け入れ、従来の加藤フォアサイド、ブクサバックサイドから入れ替えて1回戦に挑んだ。
その初戦で勝利した時は、新陣形が機能したかどうか、まだそこまで実感はなかったという。ただ加藤は「やはりリターンは、バックサイドの方がやりやすい」の手応えを再認識。デュースの際、二人のどちらがレシーバーに行くか選べる“レシーバーズ・チョイス”の時、加藤が行く場面も今大会では増えていった。
2回戦で、パリ五輪金メダリストのジャスミン・パオリーニ/サラ・エラーニ(イタリア)に勝った時には、事前に立てた戦略の機能と同時に、サイドを変えた効能を実感し始める。準々決勝のジャン・シューアイ/エリーズ・メルテンス(中国/ベルギー)戦では、「相手は二人ともストロークは良いが、前衛があまり動くことがないので、むしろやりやすかった」と、自身たちのストローク力及び連携に自信を深めた。
そして迎えた、準決勝。第1シードには、自分たちの力を信じ、正面突破すべく臨んだという。
「今回は相手を崩すというよりも、自分たちの良いプレーをしようと思った。相手は第1シードなので、どれぐらい通用するのかという思いで挑んだ」
その上でもちろん、状況に応じ策を講じ、有効なプレーを増やしていく。第1セットは落とすものの、ブレークされたゲームの多くはデュースで、スコアほどに離されている感じはない。同時に、「二人の間はあまり抜けない」と認識し、揺さぶりをかけていった。というのも、相手はサウスポーのタウンゼントがフォアサイドにいるため、中央の守りは硬いから。
「特にタウンゼントが前にいる時、真ん中に思いっきり打っても返される。二人の間に打っても全然効いてない」
そこで自身が後衛にいる時、加藤は、前に入る動きを多く取り入れた。「ラリーで押されてはいない。むしろ押し込めている」という手応えとパートナーへの信頼が、それを可能にもしていただろう。
「フォアサイドでプレーしていた時はやらなかったプレーが、今日はたくさんあった。ベースラインで打ってから前に出るプレーもフォアサイドの時はなかったので、変えて良かったなというのは、今日は結構感じました」
試合後に、加藤がしみじみ振り返る。
その成果が端的にコート上で体現されたのが、マッチポイントだ。リターンと同時に前に出て、正面に来た浅いボールをボレーで返す。そうして相手の浮き球を、ジャンプ一番、豪快にスマッシュで叩き込む。スピードと躍動感に満ちた、実に加藤らしいプレーで熱戦に終止符を打った。
サイドチェンジにより噛み合い、高速で回転しはじめた歯車。その疾走を実感しながら、WTA1000カテゴリーでは初となる頂点へと加速する。
現地取材・文●内田暁
【動画】加藤/ブクサ組が準決勝で見せたスーパープレー
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1月の「全豪オープン」(四大大会)で、レナタ・サラスア(メキシコ)と組みベスト8に進出した加藤は、その後ツアーでは、ブクサと組んで出場。「ストロークがしっかりしている」パートナーとは、相性も良かったはず。実際に両者のプレーは、悪くない。ところがツアーでは、5大会連続で初戦敗退を喫した。
「何かを変えなくては」
そう思った加藤は、今大会が始まる直前に「サイドを入れ替えてみない?」とパートナーに提案。ブクサも、「私はどっちでもいけるから、あなたの好きなようにしよう」と快く受け入れ、従来の加藤フォアサイド、ブクサバックサイドから入れ替えて1回戦に挑んだ。
その初戦で勝利した時は、新陣形が機能したかどうか、まだそこまで実感はなかったという。ただ加藤は「やはりリターンは、バックサイドの方がやりやすい」の手応えを再認識。デュースの際、二人のどちらがレシーバーに行くか選べる“レシーバーズ・チョイス”の時、加藤が行く場面も今大会では増えていった。
2回戦で、パリ五輪金メダリストのジャスミン・パオリーニ/サラ・エラーニ(イタリア)に勝った時には、事前に立てた戦略の機能と同時に、サイドを変えた効能を実感し始める。準々決勝のジャン・シューアイ/エリーズ・メルテンス(中国/ベルギー)戦では、「相手は二人ともストロークは良いが、前衛があまり動くことがないので、むしろやりやすかった」と、自身たちのストローク力及び連携に自信を深めた。
そして迎えた、準決勝。第1シードには、自分たちの力を信じ、正面突破すべく臨んだという。
「今回は相手を崩すというよりも、自分たちの良いプレーをしようと思った。相手は第1シードなので、どれぐらい通用するのかという思いで挑んだ」
その上でもちろん、状況に応じ策を講じ、有効なプレーを増やしていく。第1セットは落とすものの、ブレークされたゲームの多くはデュースで、スコアほどに離されている感じはない。同時に、「二人の間はあまり抜けない」と認識し、揺さぶりをかけていった。というのも、相手はサウスポーのタウンゼントがフォアサイドにいるため、中央の守りは硬いから。
「特にタウンゼントが前にいる時、真ん中に思いっきり打っても返される。二人の間に打っても全然効いてない」
そこで自身が後衛にいる時、加藤は、前に入る動きを多く取り入れた。「ラリーで押されてはいない。むしろ押し込めている」という手応えとパートナーへの信頼が、それを可能にもしていただろう。
「フォアサイドでプレーしていた時はやらなかったプレーが、今日はたくさんあった。ベースラインで打ってから前に出るプレーもフォアサイドの時はなかったので、変えて良かったなというのは、今日は結構感じました」
試合後に、加藤がしみじみ振り返る。
その成果が端的にコート上で体現されたのが、マッチポイントだ。リターンと同時に前に出て、正面に来た浅いボールをボレーで返す。そうして相手の浮き球を、ジャンプ一番、豪快にスマッシュで叩き込む。スピードと躍動感に満ちた、実に加藤らしいプレーで熱戦に終止符を打った。
サイドチェンジにより噛み合い、高速で回転しはじめた歯車。その疾走を実感しながら、WTA1000カテゴリーでは初となる頂点へと加速する。
現地取材・文●内田暁
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